平成5年度 研究紀要 Vol.23 -108/162page
国内のコンセンサスが不十分であると、弁護側を論難した。
一方、弁護側は、検事側の立論の「PKO」活動への基本的な理解不足を指摘し、国際世論と日本の責任の観点から、強く反論した。
この後、「証人喚問」となり、それぞれの側が自分たちの立場を補強するために選んだ質問に対して、教科担任(阿部)はそれぞれの側に有利になるように公平に証言した。検事側は、世界の武器輸出の現状を質問し、弁護側は、国連における平和維持活動の趣旨と現状の確認を求めた。
最終陳述では、これまでの議論の経過をふまえて、双方ともに論点を確認した。
この間、ディベーター以外の生徒たちは、5,6名ずつ陪審グループを作り、陪審員席で裁判の進行を傍聴した。また、「評価カード」に評価とメモを記入した。そして、最終陳述後ただちに討論に移り、グループごとに票決した。
票決は、二つに分けて行い、まず、有罪か否かについては、3-2で無罪、つまり、「PKOへの自衛隊の参加」は僅差で正当であるとされた。また、立論の合理性や説得力については、5-0で弁護側の勝利となった。
(5)生徒の感想の分析
ディベートを初めて体験した生徒たちであったが、ディベートに対して、80%を越える生徒たちが肯定的な評価を下した。その理由として挙げられたものは、「おもしろい」「社会に出て必要」「知識が生きて豊かになる」などである。今後もディベートをやりたいかどうかについては、「もっとやりたい」という生徒が、24.2%、「やっていい」が、52.4%、「あまりやりたくない」14.1%、「やりたくない」9.3%という結果だった。肯定的な回答が、76.6%に達している。
その一方、「討論の時間が足りない」「慣れてなくてやりにくい」「有罪、無罪という表現が嫌だ」などの意見も見られた。
次に「証人喚問」における教師の参加であるが、「良かった」75.2%、「良くなかった」4.7%、「分からない」20.1%という結果だった。「良かった」とする理由は、「自分たちが調べても良く分からないことが、分かりやすく説明されたから」というものが大半を占めていた。「良くなかった」とする理由は、「一人で、立場をその都度変えて証言するのは良くない」といった、主として方法に対する疑問や抵抗感であった。
また陪審蕃グループに参加しての意識は、下表のとおりである。
1 陪審としての参加感 (数値は%)
あった 41.5 なかった 25.2 わからない 33.3
2 グループ内での発言
言えた 54.9 言えなかった 21.4 わからない 23.7
3 裁判の進行の中で,ディベーターとして発言したい時があったか
あった 56.9 なかった 33.6 わからない 9.5
陪審グループの討論の時間が、ともすれぱ不足がちであり、知識や理解も足りず、もう一つ盛り上がりに欠けるように感じられたのは事実である。しかし、肯定的な答えが50%前後にあること、事後の生徒の感想が概ね肯定的であったことから、一応の評価はして良いもののように思われる。