平成5年度 研究紀要 Vol.23 -113/162page
地域の学習素材を生かした生活科指導の工夫
一第1学年「秋となかよし」の実践を通して一長期研究員 大友 誠
I 研究の趣旨
1 はじめに
平成元年の学習指導要領の改訂により、小学校低学年に生活科が新設された。その趣旨とねらいの4点は、そのまま生活科の教科目標に生かされている。それらは、
(1)具体的な活動や体験を通すこと
(2)自分と身近な社会や自然とのかかわりに関心をもつこと
(3)自分自身や自分の生活について考えること
(4)生活上必要な習慣や技能を身に付けること
ということである。生活科の学習においては、目標(2)とのかかわりで児童の身近な環境である生活圏がその対象となる。そのため、地域や学校の特性を生かした学習素材の開発とともに、児童の実態をふまえたさまざまな実践がなされるようになってきた。
ところで、実際に授業を進めていく上で、生活科の学習指導についての悩みや問題点も聞かれるようになり、特に生活講座を受講した多くの先生方からは、指導に当たって困ったり悩んだりしていることとして、
・指導計画に関連して、活動のきっかけ作りをどうすればよいか。
・教師の援助や承認は、どうあればよいか。
・評価は、どうあれぱよいか。
などいくつかの問題点が挙げられたが、これらの問題について実際に指導をしていく上で、具体的な解決の手だてを見いださなければならないだろうと考え、研究を試みることにした。2 研究のねらい
生活科における直接体験は手段ではなく、目標であり内容そのものである。つまり、体全体を使 った具体的な活動や経験を通して生きて働く知恵を身に付けていくと同時に、児童は学習の楽しさや成就感、満足感を味わうことにもなる。
このことについて、『指導書』生活編では、学習指導上のポイントとして、次の6点を述べている。(1)自発性
意欲的に自分からやってみようという気持ちの起こる活動や、本当に楽しいと感じ取れる活動にしていく。(2)能動性
自ら進んで体を動かし、心を活発に働かせて対象に働きかけていくようにする。(3)直接体験
間接体験よりも印象が強く、児童とのかかわりが強い直接体験を重視した活動となるようにする。(4)情緒的なかかわり
より興味や関心をもたせるために、感動する、驚く、楽しむ、喜ぶ、悲しむなどの体験を通して学習する姿を大切にする。(5)振り返ること
自分が体験した後で、表現活動などを行い、自分の活動を振り返ってとらえ直すようにする。(6)生活
日常のさまざまな生活体験を取り出し、活動を通して自分の生活を豊かにする工夫を学ぶようにする。また、学習指導を進めるに当たっては、以下のことに留意する必要があると言われている。
(1)教師が引っ張ったり、一方的に教えたりするのでなく、児童の活動を援助したり、引き出したりするようにする。
(2)児童の興味・関心をとらえ、それが十分満足されるような学習活動となるように、環境とのかかわり方や授業の展開を工夫する。