平成5年度 研究紀要 Vol.23 -132/162page
3.学習の個別化や新しい学力観に即した指導への効果
本校のコンピュータは3人に1台だったので、あまりはっきり言えないが、ソフト自体は個別化に役だったと思う。知識を与えるというのでなく、個人の能力や理解の程度に応じて学習を進めることができるのでその一端を担うことはできた。
4.ソフト使用上の問題点と改善点について
○地震計の記録を表示する地震波のところをもう少しゆっくり出せるとよい。
○メニュー4で、資料一2のデータを前後に分けて入力すると、測定値の座標を表す点が偏ったグラフになる。これをランダムに並べると、入力するデータが少なくとも適切なグラフが得られるようになる。
5.使用後の指導者の感想
私自身、コンピュータを用いた授業は初めてで心配だったが、大きな問題もなく楽しく行うことができたし、生徒の反応もおおむねよかった。このソフトに限らず、機会があれば少なくとも単元1時間ぐらいはコンピュータを用いた授業を行うようにしたい。
IV 試行授業を踏まえた研究の考察と留意点
1 本ソフトウェアはBASIC言語を用い、ソフトの作成や改良を比較的簡単にできるようにしたものである。しかし、動作が一般に遅く、色彩も鮮やかにはできなかった。
それにしても、当センター理科講座や試行授業を通して見た限りでは、各学校で使用するにあたって、これで十分であると思われる。
2 当ソフトウェアは操作方法を簡易にし、内容も段階的、統一的に理解させるようにした。また、いろいろな地震事象に対応した、まとまりのある地震プログラムを作成することをねらいとしたが、試行授業ではこのことが十分達成されているようであった。
3コンピュータに対する大きな抵抗感を最後まで持った生徒も見られ、先生に直接教えてもらった方が良い、という反応もあった。このような生徒に対して、コンピュータ学習をどう指導するかが今後の研究課題である。
4 ソフトは誤作動防止対策を十分考慮して作成したが、まだ不十分で、作成者の予想していなかった生徒の誤操作があったりして、コンピュータが途中で停止してしまうことがあった。今後研究を継続し、改良を図っていきたい。
5資料一2のデータを活用するに当たっては、地震波の遠さは地盤の地質により変化が見られるので、なるべく多くのデータ、64個全部を入力して調べることが望ましい。しかし、中学校では生徒の実態に即してランダムに取り出して活用するのもよい。
V おわリに
理科教育へのコンピュータ利用は今日的な課題である。しかし、もっと手軽に、誰でも簡単に使用や改良のできる簡単なソフトはできないかと考え、開発に3ケ月、試行授業を通しての改良に3ケ月かけて作成した。まだまだ不十分なところが多いが、研究対象生徒のアンケート結果等から見ると一応の成果が見られ、成功であった。
今後も理科の他の教材ソフトウェアや各会社の機種に対応したソフトウェアの作成を図り、各学校で容易にコンピュータの活用を図れるよう、ソフトの開発を行っていきたい。
最後に、試行授業にご協力していただいた福島市立福島第一中学校校長・白坂良一先生、同校教諭植野松男先生に厚くお礼を申し上げます。
参考文献
○標準版BASIC〔基礎編〕 パソコン教育研究会・編学習研究社
○標準版BASIC〔演習編〕 パソコン教育研究会・編学習研究社
○PC-9801シリーズBASIC用語・用例辞典 伊東ひろみ著成美堂出版
○科学の辞典(第2版補訂版) 岩波書店