平成5年度 研究紀要 Vol.23 -140/162page

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5 まとめ

 環境教育における「川」及び川の周辺の生物の教材としての有効性及び、取り扱う場合の留意点をあげる。

 (1)環境教育の素材として「川」を取り上げる場合は、子どもに身近で、かつ環境(人間の生活が及ぼす影響)が大きく異なった川を幾つか選定することで環境の違いが明確になり、人の生活の影響を実感できる。

 (2)身の周りのいろいろな川には、それぞれに適応できる水生生物が生息している。そこに生息する水生生物の種類を調べることによりより、その川の水質をおおよそ推測できる。

 (3)環境が大きく違ういくつかの川を観察することにより、そこに生息している水生生物の種類をを予想できる。

 (4)水質分析試薬(パックテスト)などを使って水質を調べ、水生生物の調査結果と併用するとより詳しく水質を分析でき、環境保全の意識を高めることができる。

 (5)川原は、帰化植物が繁茂しやすい環境にあり、そこでの帰化率を調べると都市環境への移行段階や土地の富栄養化(汚れ)の進み具合を知ることができる。

 (6)「川」の自然を地域の自然として、住民との協カで明らかにしていくことができる。その方法として「○○だより」などが有効であること。

 本研究では、環境教育の素材が実は、子ども達が何気なく過ごしている日常の中にあることや人間の生活と深く結びついた姿で我々にいろいろな問題を投げかけていることなどを明らかにすることができた。

 また水生生物の調査は、一般に水のきれいな大きな河で行うことが多く、カゲロウやカワゲラ、トビケラ等の調査で終わっていたが、児童にとって身近な環境である「どぷ」や家の周りの小さな川を対象に行うことで、より一層環境問題を身近に感じさせることができる。

 このような体験的な活動を通して、環境問題を考えさせることによって“Think G1obally,Act Loca11y"すなわち「地球規模で考え、足元から行動する」という環境教育の一端を担うことができると考えられる。

6 今後の課題

 環境教育は、理論ではなく実際に児童を活動させてこそ意義があるものである。とくに生物を教材とする場合、飼育活動が大きな効果を発揮することが考えられる。今後は、水生生物の飼育活動(ホタルなど)を通して、児童が自然や自然の中の生物に対して豊かな感受性を持つことができる教材の開発に努めていきたい。現在、ヘイケボタルの飼育の教材化をすすめている。

写真31ミズゴケに産卵するヘイケポタルと卵
写真31ミズゴケに産卵するヘイケポタルと卵


写真32ヘイケボタル幼虫と餌のカワニナ
写真32ヘイケボタル幼虫と餌のカワニナ


〔参考文献〕
日本産水生昆虫検索図説 1992   川合禎次著
東海大学出版会
調べる・身近な水 1992   小倉紀雄著
講談社
環境汚染と指標植物 1976   峠田宏著
共立出版
身近な環境を調べる 1992   梅埜國夫著
東洋館出版社
日本の野生植物(I II III) 1984   佐竹義輔他著
平凡社
環境にやさしい暮らしと社会を求めて 1990   大阪府
環境教育副読本 1991   岐阜県
環境教育基本方針 1991   三重県
ふくしまの環境 1993   福島県
ふくしま湖沼サイエンス 1992   福島県
環境教育指導資料(小学校) 1991   文部省

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