平成5年度 研究紀要 Vol.23 -142/162page
エイズ教育の難しさの理由として最も多かったのは、「自分自身がエイズについて正確に理解していないから」というのが、全体の約半数であり、「適切な教材がない」と回答した教師も比較的多かった。
以上から、エイズ教育の必要性について多くの教師が認めていても、実際の指導についてはかなり難しい状況にあることが分かる。
新聞、テレビ等のマスメディアの発達で、エイズについてのさまざまな情報を得ることは比較的簡単である。
だが、児童生徒にとって必要であろう情報を適切に選択、収集できる状況が十分に整っていない現状にあるのではないか。
このことから、授業でエイズ教育を実践するために、児童生徒に合った適切な教材を開発する必要性を、教師は感じているものと考えられる。
2 教材ソフト開発の必要性
一般には使用するソフトが、必ずしも学校や児童生徒の実態に合うとは限らない。合うものでなけれぱ、授業者がパソコンに関して専門的な知識、技術を有していれぱ、自作したり、または著作権で許される範囲内で児童生徒の実態に合わせてソフトの内容を変更したりしなけれぱならない。
現実には、パソコンに関して専門的な知識、技術のある教師はまだ多くない。さらに、開発する場合でも、言語等を用いて開発するには多くの時間を必要とすることが多いため、一人一人の教師が多くの校務を抱えている現状では、教材ソフトの作成も容易ではない。
一般には、教材ソフトを有効に活用するためのポイントとしては、教材ソフト内容変更の柔軟性が挙げられる。すなわち、教材ソフト開発者以外の教師が授業の中でそのソフトを使用する場合、ソフトの内容の一部を児童生徒の実態に合うように、一部の書き換えでソフト内容を簡単に変更する機能が備わっていることが重要なことでもある。
今回教材ソフトを開発するに当たっては、上記のような問題点などを考慮して、プログラミング言語等の専門的な技術がなくても教材ソフトを作成できるオーサリングシステムで開発を行った。
オーサリングシステムとは、基本的にはCAI(Computer Assisted Instruction)のコースウェアを作成するためのものであり、教材作成支援ソフトとも呼ばれている。パソコンの初心者でも比較的短時間で教材ソフトを作成でき、さらに内容の変更等も簡単な操作で行えるように構成されている。
本研究では各種のオーサリングシステムのうち、異機種間での互換性および操作性が高いFCAI(国立教育研究所開発)を用いた。
性に関する指導、特にエイズに関する指導は、児童生徒の健康で安全な生活をおくる観点からも、今後重要視されなければならない分野であると考える。情報化対応教育の中にあって、エイズに関するソフトを開発することは意義のあることと考え、研究開発を行った。
II ソフト開発について
1 エイズ学習ソフトについて
今回開発した教材の内容は、「エイズ」という社会的には非常に関心が高いものである。だが、アンケート調査結果からも分かるように、授業者にとっては指導しにくい内容である。また、エイズについて正確な知識を有している教師は、少数であるという現実がある。さらに、児童生徒にとっても断片的知識は有していても、総合的な知識を獲得しにくい分野でもある。
以上のようなことから、今回ソフト開発に関しては、以下の点についてできるだけ配慮した。
1.エイズについての基本的な内容を、児童生徒に簡潔に提示できるよう工夫した。
2.短時間で、エイズについての概要が分かるように工夫した。
3.できるだけ多くの児童生徒、および教師