平成5年度 研究紀要 Vol.23 -149/162page

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学校復帰へ向けた意欲づけを図る指導援助の在り方に関する研究


一適応指導教室での実践を通して一

長期研究員  渡 邊 和 夫

I 研究の趣旨

 文部省では、不登校を「主として何らかの心理的・情緒的な原因により客観的に妥当な理由が見出せないまま、児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状態にあることとして幅広く理解することが妥当であろう」と述べている。

 現在は、上記のような不登校の状態にある児童生徒に対してその問題の解決に向けて様々な努力がなされている。

 学校への復帰を願い、その問題の解決を図るということが、ただ単に学校へ再び登校できるようになることではない、というとらえ方は周知の通りである。

 つまり、不登校の状態にある児童生徒の学校復帰に向けた指導援助において必要なことは、周りの者が児童生徒のそれぞれの内面的な成長を促すように、心を近づけてはたらきかけることである。そのようなはたらきかけによって、児童生徒が自分自身に気づき、学校復帰への意欲を現実的に持てるようになると考える。

 さて、教育センターにおいて、今年度より、「適応指導教室(HFTクラブ)」が開設され、不登校児童生徒への望ましい指導援助の在り方に関する実践的な研究が進められることとなった。

 そこで、適応指導教室での望ましい指導援助の在り方について組織的、実証的に研究するスタッフの立場から、本研究においては、不登校児童生徒の事例を通して、学校復帰に向けた意欲づけを図る視点から適応指導教室における望ましい指導援助の在り方について探ってみたいと考え、この主題を設定した。

II 主題についての考え方

1 不登校とは

 児童生徒が登校しない状態は、単に学校に対する不安や恐怖という面だけでなく、多面的に理解する必要がある。

 つまり、不登校とは、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しない、あるいは、したくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)」ととらえる。

2 学校復婦への意欲づけを図る指導援助の在り方とは

 不登校状態にある児童生徒が、不登校という状況を自らの努力で克服して、再び登校できるようになるためには、援助者が児童生徒の自立をいかに促すかという視点に立つことが不可欠である。

 すなわち、自立を促す指導援助の過程で、本人自身の気づきが図られ、周りの人々とのかかわりの中で調和を保ちながら、主体的に生きていくことのできるカが育まれていくものと考える。

 そのためには、不登校状態にある児童生徒を十分に理解することが前提条件となる。不登校状態にある児童生徒の理解は、カウンセリングにより心を受容し、共感することを中核とする指導援助の過程を経ることによってなされるものである。また、児童生徒の理解を図り、自立を促す指導援助の過程は、とりもなおさず、本人自身が自己理解を深め、自己決定をしていく過程でもあるととらえられる。

 すなわち、児童生徒自身が自己理解を深め、自らの可能性に気づき、自信をとりもどすことにより、現状を克服して学校復帰へ向けて挑戦しようとする意欲を沸き上がらせることができるものであると考える。

 適応指導教室は、小集団構成を持つ環境でもある。同級あるいは年齢の近い者同士が生活をともにすることは、社会性、協調性の習得が図られ、本人の成長を喚起する上で望ましいものである。この小集団を積極的に活用し、望ましい指導援助


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