平成5年度 研究紀要 Vol.23 -155/162page
<個々のケースの理解・HFT生活プログラムによる個人への援助><集団活動における自主的体験の促進・充実> ○自分は何をしたいのかを自分で考えてできるように、M子の気持ちを傾聴するように心がけて、適応指導教室での生活計画を立てさせる。 ○M子は、適応指導教室での活動をとても楽しみにしており、仲間と仲良く活動していきたいとめあてを決める。特に、マイプランタイムでの活動は、 「大好きな描画をしたい」と自ら決める。 (教科書を持参するものの、漢字 の書き取りや計算などはしたくないようである。) マイプランタイムによる自己表現として、各回30分程度次のようなことをする。
・ゆりなどの花の素描・室外での写生・クロッキー・理科の教科書にある「豆の発芽と成長」の絵の模写○マイプランタイムで描画に夢中になるなど、計画したことができたことをその部度M子自身に確認させ、その姿をおおいに褒める。 ○描画に取り組む姿は、楽しそうであり、集中して活動する。 M子は、自分の得意な描画に取り組む様子を褒められとてもうれしそうな表情で活動を 続ける。 ティータイムでの自己表出として、各回20分程度次のようなことをする。
・持参した麦茶と菓子を飲食しながら談笑する。・TV番組を話題として進行役をつとめる。・自分の家での最近の出来事を話題にして話す。・持参した幼少の頃の写真を見せ、そのころのことを恥ずかしそうに話す。○共にお茶を飲み、冗談を言って笑わせたりしながら、楽しい家庭的な雰囲気の中で話題をふくらませる。 ○持参した菓子を友達と互いに交換しながら楽しそうに談笑し、 適応指導教室へ来所して仲間と話せることがとてもうれしそうである。 フレンドタイムでの自己表出として、各回60分程度次のようなことをする。
・ファミコンゲームをして過ごす。・水槽の魚を写生し、とても丁寧に仕上げる。○ファミコンゲームの操作ぷりを褒めたりしながら、仲間とともに仲良く活動するM子の姿を見守る。
○HFTプランタイムでは、まず遊ぴを通して仲間同士の交流を図らせる。○友達とともに活動したり、マイプランタイムの延長としての活動をしたりして、楽しそうに過ごす。 非常に積極的な活動ぷりである。
○緊張感は見られず、大声を出して仲間のプレーを応援したり、仲間とともに楽しそうに活動したりする姿が見られる。HFTブランタイムでの活動として、各回100分程度次のようなことをする。
・バトミントン、卓球などを友達と楽しそうに行う。・近所を散歩する。○日直のときには、準備運動やチーム編成を決めさせる機会を設定し、自己決定を促す。それに対する仲間からの賞賛が与えられる。 ○ゲームは楽しいが、ルールがあり'、感情をコントロールしないと仲間はずれにされるおそれがある。M子は、不器用で動作もにぷいが、仲間から励まされることにより、自分が決めたルールによるゲームを拒否することもなく仲間とともに活動する。 (仲間の励ましがあるため、M子は、自らの感情を 統制することができるようになってきたようである。) ○M子が、教科書の絵を見ながら、これはどういう絵なのか説明を求めたりしたとき、文章を読んで教えながら漢字を書かせたりすることがあった。そこで、描画とあわせて、そろそろ漢字を少しずつ覚えさせたいと考え、好きな理科の教科書を待参するように話す。 ○教科書を持参するように言われたことが嫌で、来所したくないと母親に訴えたが、母親に説得され、遅参ながらも来所する。 ○母親から遅参の訳を聞くと、勉強させられるのがいやなので来所したくなかったということのようである。そこで、M子の気持ちを受容し教科書を持参しなくてよいと話す。 ○ところが、M子は、 次回の来所時には理科の教科書を持参し、少しは勉強してもよいと言う。 (M子の気持ちを受容していくことを中心にして接したため、M子は自分なりに考え、無理をして教科書を持参したものと思われる。M子は、「適応指導教室で勉強する」ことは、すなわち「学校に登校しなければならない」ことだという認識でいる。) ○母親と面接相談をして、M子の現状について知るとともに、母親の気持ちを受容しながら、M子にとって今何が必要なのか、母親自身に気づきが図られるようにする。 ○M子の家庭での行動を中心に話してくれる昼夜逆転の状態である。姉の生活パターンに振り回され、M子に対しては、なかなかかまってやれない母親の姿が見える。それでも、母親は、図書館や公園、スーパーマーケットなどにM子を同伴して、M子とだけの時間を持つようにしているようである。
○昼食は、ロ一ソンで購入してきた弁当を食ぺる。(面接相談の一部分から)
母親 : 私は、少しは勉強してほしいと思って、「これくらいは、やったら」と言うと、M子は、怒って泣いてしまうんです。
T :困ってしまう・・。
母親 : そう、私だって一生懸命なんだから、少しぐらいは…。
T : 少しぐらいは我慢してほしいと、M子さんに言いたいんですか。
母親 : はい。そうなんです。M子が、姉にもつきあわされて、いらいらしてし、て眠れないことはわかっていて、なんとかしてやりたいと思ってはいるのですが・・。T:お母さんは、つらい思いをしてきたんですね。M子さんも、きっとお母さんの気持ちをわかってくれますよ。
・・・・・・
ところで、M子さんは、最近、昼食にはローソンの弁当を食ぺていることが多いようですが・・。
母親 : は、はい。・・・・
T : お母さん、M子さんに、できるだけお母さんの手作りの弁当を食ぺさせるようにしてみませんか。お母さんの気持ちが伝わると思うのですが、どうでしょうか。○HFTプランタイムで、活動のリーダーとなった日には、M子の自主性を尊重し、思うう存分 ○次回の来所時に、 母親手作りの弁当を広げて、卵焼きをおいしそうに食ぺるM子の姿が見られる。
○バドミントンの対戦チ一ム組合せを考えるなど、仲間に明るく接しながら積極的に活動をする。