平成5年度 研究紀要 Vol.23 -157/162page

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    など社会性を育成するよい機会となった。
○姉が人院したことにより、M子の就寝時刻が早まる。母親のM子へかかわることも多くなったと思われる。
○担任へ、M子の状況報告として、M子の就寝時刻が早くなったことや学校に対する不安感がまだ残っていること、そして、近々会って話し合いをしたい旨について伝える。 ○担任は、8月初旬に来所して相談することを約束する。
8月〜12月<HFT生活プログラムによる個人への援助><集団活動における自主的体験の促進・充実> ○8月初旬に担任と面接相談を実施する。現状の報告と情報交換を行い、今後の連携について話す。 ○担任は、M子の級友に、「M子は病気で欠席している」と伝えている。級友は、M子のことを心配している。担任は、家庭訪問などによりM子、母親とのかかわりをさらに密にしていくことを約束する。
○母親が前日に来所時刻を確認したにもかかわらず、9月の初回から遅参する。 ○遅参の理由は、母親が弁当を作っていたためとのことである。M子は、昼食に、母親手作りの弁当をとてもおいしそうに食べる。
○久しぷりの来所でもあり、M子に、夏休み中の生活の様子についてたずねる。 ○夏休み中にいろんな所へつれていってもらったことや母親と学校へ行って校長先生や担任に会ってきたことなどを話してくれる。さらに、今の学校には、「いじめっ子がいるから嫌。」「前のW小学校には、やさしい友達がいるからW小学校なら行ってもいい。」などと話す。まだ、学校に対する拒否的な感情が残っていることがうかがえる。
○遅参したり、眠たそうにしたりしていることが続くので、家庭生活の様子をたずねてみたいと考え、母親と面接相談をする。 ○M子は、眠たいときに姉につきあわされて起きているため、寝られないことがあるようである。人院先でのトラプルから今は在宅加療中の姉の生活パターンが、M子に大きく影響している。また、母親が「○○協会」なるものにM子を同伴して夜間外出することが多いことも影響している。
○HFTブランによる映画観賞を行う。 ○前回の見学学習のとき、JR駅で子ども用の切符を購入する際にハプニン グがあったが、 今回は、仲間からも励まされながら「できるかな?」と不安を訴えながらも、「子どもの・切符を、一枚くださいと言い、切符を購入する。褒められ、小声で「できた」と言い、嬉しそうである。
○生活プログラムに従って、指導援助を継続する。 ○マイプランタイムでは、紙粘土の人形づくりや適応指導教室の掲示物の作成、好みの描画などに取り組む。ティータイムでは、友達との談笑やゲームなどをする。フレンドタイムでは、適応指導教室の掲示物の共同製作やファミコンゲーム、友達との談笑などの活動をする。
○母親と面接相談をする。  
(面接相談の一部分から)
母親 : 私は、毎日神経科に通院しているんです。「うつ」がひどくなると、無気カになり、食べることもできなくなり何事も悪い方に考えてしまうんです。私がそんな状態になると子ども達の具合いも悪くなってしまうんです。だから、そうならないように毎日医者に通っているんです。
T :お母さんもつらいんですね。
母親 : 先生、M子が、この間「お母さん、私につきあっていないで先に寝ていいよ」って言ってくれたんです。とってもうれしかったんですよ、先生。M子は、睡眠剤を飲んでもなかなか眠れないないんです。それなのに、私のことを心配しているんです。
  ○母親は、不安神経症であり、毎日神経科に通院している状態である。M子は、そんな母親の姿を見ながら、次第に母親にまとわりつくことが少なくなってきている。(適応指導教室で安心感、存在感、有能感を感じながら生活をしてきた成果であると思われる。)
○来所するなり、M子は、自ら教科書とノートを開き、「今日は、理科の勉強をするの!」と言うので、その自主性を褒める。 ○前回、皮膚科に通院のため遅参する。その際、理科の教科書を忘れる。そのときに教科書を忘れたことを叱責せず、M子が集中してできる描画をして過ごしてよいと受容した経緯がある。その結果、M子は・勉強に対する自主的な姿勢を見せる。(M子は、この日新しく自己課題を自ら設定し、生き生きと課題に取り組んだのである。M子は、今安定した気持ちでいる。 絵を描きながら、少しずつ漢字を覚えていくことができる自分がとても好きでたまらなくなってきたようである。)
(面接相談の一部分から)
M子 :  漢字を書くことはいいんだけど、読んだりすることが苦手なの。
Tそう、苦手なことが気になるんだね。
M子 : うん。
・・・・・・
T : 学校に行かなくちゃと思うのは、100の内どのくらいかな?
M子 :  38か39。
T : その数字を上げたいと思う?
M子 :  どっちでもいいけどなあ。ここでの勉強は、好きだよ。
T : そうか、M子さんは、勉強が好きなんだ
M子 :  小学技で勉強するときは、かたっくるしくて!
○M子の心に芽生え始めた自主性を見守り、前向きに変容しつつあることを評価しながら、現在も適応指導教室の生活プログラムに従って指導援助を継続している。 ○M子は、今は感情が安定し、自分を楽に表現しながら活動を楽しみ、適応指導教室の仲間との関係もうまくいっている。適応指導教室でのカウンセリングと仲間との活動を通して、自己像が修正され、自己への信頼を回復させつつある。(M子に学校復帰へ向けての意欲を沸き上がらせていくようにするためには、今後も、M子の心の中に芽生え始めた自主性や自立心を見守りながら、M子の前向きな変化を高く評価し育てていくといった長期的な心配りと忍耐カが必要である。)

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