研究紀要第94号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究」 -002/162page
4研究仮説昨年度の小学校社会科における「試行的検証授業」の成果を受けて、全体にかかわる研究仮説を次のように設定した。
学習指導において、目己評価の働きを促し、相互評価、教師からの評価を組み合せながら、児童生徒一人一人の思いや発想を認め、生かす評価の手だてを工夫すれば、児童生徒は目分の「よさ」に気づき、関心・意欲が喚起され、自ら学ぶ力が高まるとともに、「よさ」を伸ばすことができるであろう。
新しい学力観に基づく学習指導における教師の役割は、児童生徒の学習対象や活動への関心・意欲・態度を重視し、主体的にかかわっていけるように指導援助することである。
そのために、様々に工夫された学習指導の節目節目となる場面で、児童生徒一人一人の思いや発想を生かす評価の工夫が望まれる。
本研究では、「自己評価」「相互評価」「教師からの評価」を組み合せ、多角的に児童生徒を評価する工夫を試みているが、それぞれの評価について次のように考える。
「自己評価」
「自己評価」は、児童生徒が自らを見つめ、理解しようとする働きを促すとともに、自らを高めて、目己実現に向かおうとする意欲を喚起することができるものである。
「相互評価」
「相互評価」は、友達を見る眼を育てると同時に、友達からの評価を基に自己を見つめ直していく働きがあり、児童生徒が互いの「よさ」「すばらしさ」を発見し、認め合い、高め合っていくための基礎になるものである。
「教師からの評価」
「教師からの評価」は、日常の学習活動における観察や作品分析・テストなどから得られた総合的で診断的な評価であり、児童生徒の「よさ」についての、より客観的な評価である。その場で、児童生徒にフィードバックされる評価と、単元のまとまりごとなどに児童生徒に伝え、意識化を図っていく評価とがある。
実際の授業において、これらの評価方法は、教科や教材、学習活動の特質に応じて、多面的・総合的に児童生徒の「よさ」が見いだせるように、具体化されなければならない。つまり、評価方法を適切に組み合せたり、評価の手だての工夫が望まれる。
そして、そのことによって、児童生徒の個性の芽生えともいうべき「思い」や「発想」が生かされ、「よさ」となり、やがて一つの個性として確立されていくことが可能になるものと考える。
また、これらの指導と評価を継続することによって、児童生徒は、自分自身で見いだしたり、教師や友達から認められたりした自らの「よさ」に気づき、次の学習への意欲を高めていくものと考えられる。この意欲一情意面の喚起こそ、知識・理解の認知的学カや思考力、判断力を伸ばす基盤と考えられるのである。