研究紀要第94号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究」 -010/162page
to the future」であったため、1時間目の導入時での生徒の興味は大変高いものであった。使用した場面は、クライマックスの場面である。使われている英語もほとんどが既習のものであり、教材として扱うには問題ないと考えた。また、コミュニケーションに対する意欲を持たせるためには、何か一つでも生徒たち独自の情報を伝えさせることが大切と考え、会話の最後に登場人物の気持ちを表す1文を付け加えさせる課題を与えた。
練習で1時間、発表で1時間かけたわけであるが、練習時間は不足ぎみであった。英文そのものは短く難しいものではないが、せりふがたいへん速く、画面に合わせて読めるようになるには、練習時間は不十分であった。
評価方法としては、教師からの評価の他に、自己評価と相互評価を第1時、第2時それぞれに位置づけた。発表の際は全員にジャッジとして参加させ、ジャッジングペーパーを配布し、相互評価をさせた。このことにより、他のグループの発表に注意を傾けさせることができた。また、ジャッジングペーパーには、他の生徒に対して予想以上にはっきりと欠点を指摘しているものや、温かい言葉でうまく激励しているものも多かったため、全てのグループに配布し(記入者の氏名を切り離し)、それを基に次回の発表で工夫をするように指導した。また、下記はグルーブごとに付け加えた「DocからC1araへの励まし」の1文である。
・Try hard.
・Nice. Verygood. You are strong.
・I 1ove you C1ara. Let's・・
・I 1ove you C1ara. Fo11ow me. Don't be afraid.
・Nice and Easy.
・I wou1d not give up, if I were you.
(辞書の例文を教師に見せてもらって)
・C1ara. Jump into my chest.
・Hang in there. Cheer up.
・You are dynamite.
・You are nice woman.
発表は、声量など表現全股に十分なものとは言えなかったが、生徒は一生懸命に取り組み、特に付け加えた1文には、工夫した様子が表れていた。 また、ジャッジングペーパーと他の相互評価により「優秀グループ」「優秀発表者」「いつもより努力が見られた生徒」の3種類の表彰を行った。生徒の、賞状をもらったことに対する驚きや喜びは予想以上に大きいものがあり、また、生徒は自分たちのジャッジングペーパーから評価して表彰されたことが、うれしかったようである。
生徒の評価から今回の活動を振り返ってみると、活動全体を通して生徒の努力がはっきりと見え、自己評価でもAの評価をした生徒が多かった。しかし一人一人の生徒を見ると、まだ十分に活動していない生徒も見受けられた。ところが相互評価の結果を見ると、基本会話、吹き替え練習とも、相手に対してほとんどの生徒がAをつけている。この結果から、中学生段階での相互評価には人間関係などが深くかかわってしまうため、方法を吟味しない限り甘い評価になってしまうと考えられる。一方、練習時と発表時の自己評価を比較すると、Aの評価は練習時の方が多く、発表時はB評価が多くなった。発表に対して各自が「もっとできたのではないか」「もっとがんぱれぱよかった」などの反省をしていたことが分かった。発表は日ごろの生徒の様子を考慮すると、十分に努力したと言えるものであったが、教師が目指していた目標には達しなかった。そのことを生徒自身がよく認識した自己評価の結果であったと言える。自己評価は、方法が選択肢ではあっても、生徒が選択する際に自分の活動を振り返るため、自分を見つめ直し、次の活動への意欲を喚起する働きがあった。