研究紀要第94号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究」 -013/162page
いバランスの取れた伝達方法が、真の相互理解を生み出すためには重要である。中学生の段階でも、生徒が身近に感じる事柄について外国文化を理解し、日本文化を伝えることは、生徒の英語学習に対する関心を引き出す上で大きな役割を果たす。本題材では、西欧圏ではあるがあまり生徒になじみのない「アイルランドの中等教育について」を取り上げた。アイルランドから来たAETのメッセージを理解し、それに応答する形で、日本の中学校生活を紹介する活動を行った。これらを通して、相互に文化を伝え合うことの楽しさを味わわせ、その砥値を理解させようとした。
今回の活動では、内容理解(異文化理解)の段階と発表(自国文化の紹介)の段階で生徒の興味に応じた領域別学習を取り入れた。生徒の興味や関心に応じて教材に取り組ませることは、生徒の情意面の学カを伸長させるための一つの有効な手だてであると思われる。文化の伝達については中学校2年生という発達段階では難しい活動であるため、生徒が少人数グループを自由に編成し、その中で伝達内容を確認しながら文を作成する活動とした。グルーブ学習より個人学習の方が考えがまとまりやすいとする生徒には、一人で行えるように選択の余地を残した。発表の際には、全員がジャッジとして相互評価を行った。その結果は、表彰の形でフィードバックをするようにした。
領域別学習を行う場合には、1教室で一人の教師だけでは様々な問題点があり、取り組みにくいのが現実である。そのため今回の学習はTeam一Teachirで行うこととした。1,3時間目の活動においては、AETが文化の発信と受信の役割を担う。これは従来のTeam=Teachingのスタイルであるが、2時間目は、JTE(日本人教師)2名のTeam一Teachirで行った。2名の教師が生徒の作文活動を効率的に援助するという形態で立案した。
第1時の異文化理解では、AETが作成したアイルランドの紹介文を用いた。
聞き取りのコースを選択した生徒、読み取りのコースを選択した生徒は共に19名であった。偶 然同数になったことは、授業を2教室に分けて行うには好都合であった。聞き取りのグループの活動を見ると、生徒はAETの説明を真剣に聞き、どうにかして内容を把握しようとする意欲が十分に感じられた。AETは質間をしながら内容の定着を図ろうとしたため、生徒の表情からは内容をほぼ把握していることがうかがえた。しかし、質間に対する解答は十分ではなく、理解と表現が必ずしも一致しなかった。ただし、時間が経つにつれて、恥ずかしさも少しずつ解消し、にこやかに応答をする生徒が増えてきた。また、生徒の人数が19名だったため、教師が全ての生徒に目が届き、一人の生徒に対し何度も質疑応答ができた。大変活動的で、それでいて騒々しさを感じさせない授業になった。