研究紀要第94号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究」 -020/162page
感想を自由に記入させたが、「自分の授業に対する態度を反省できた。でも次の時間には反省を生かせなかった」「自分でもがんぱれたと思ったときは、自信を持って評価できた」「自分に厳しく評価できてよかった」等の記述が多かった。
このことから、生徒自身が自己評価によって、自分を見つめる目を養っていることが感じられる。下記は、事後調査での自己評価に関する記述の一部である。
今までは、適当にやっていたときもあったけど、自己評価をするようになって、まじめに取り組むようになった。(Cになるのがいや!)自己評価することはいいと思う。
Aとかだと、「まあいいや」とか思って勉強しないけど、BとかCとかだと、「がんばるぞ」と思える。
自己評価だから、甘くつけてもしょうがないと思うので、きちんとつけることにしている。
(2)相互評価
相互評価には、他者を見る眼を育てる側面と他者からの眼差しを基に自己を見つめ直す側面があり、自己実現を図る上でも重要な機能をもつ。昨年度の小学校社会科での検証授業で、「よさ」の再認識と伝達のために、「ふりかえりカード」からのデータを基に「贈る言葉」という手だてで相互評価を行った。また、昨年度のアンケートでも、発表や作品鑑賞などでよく用いられていることが分かり、多くの教師がその効果的な活用に興味を 示していることも分かった。相互評価の長所短所として下記の項目があげられた。
長所 ・「よさ」を認め合い励まし合って学ぶ
・客観性が増す
・観察眼が磨かれていく
・協力する気持ちがわく短所 ・判断基準があいまいで主観的になりがち
・友人関係に左右される
・相手に遠慮して本音を書かない
今回の研究では、上記のような長所短所をふまえた上で、中学生という精神的にも不安定になりがちな時期に、どのような相互評価を行えぱ生徒の自己理解に効果的であるかについて研究を進めた。実際に行ったのは下記の2点である。
・会話練習時の相互評価
・特別なコミュニケーション活動での相互評価(ジャッジとしての相互評価)1 会話練習時の相互評価
評価は選択式で行い、基準などは「6授業の実践」で述べたとおりである。会話練習はインタビュー形式であるため、生徒によっては4,5人の生徒と行うことになる。会話の相手全員について相互評価をすれぱ時間的にも負担になるため、最初に会話をする隣の席の生徒についてのみ、授業終了時に行った。次のグラフは、1回目の相互評価と自己評価を単純に比較したものである。なお、グラフ中のA〜Dは、選択した記号である。