研究紀要第94号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究」 -021/162page

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 このように、自己評価と相互評価の差は大きく、相互評価の方が甘くなり、自己評価が厳しくなることを証明する形となった。お互いに記入した相手が分かるため、遠慮が多くなり、甘い評価になったと言えよう。2回目の検証授業の会話練習での結果を見ると、相手にA以外の評価をした生徒はいなかった。

 会話練習は検証授業以外でも継続して行っているため、生徒の活動は向上しており、この時間の教師の観祭でもクラス全体としては意欲の伸びが見られた。しかし、一人一人の生徒に目をやれぱ、まだ日本語を使用してしまう生徒、一人としか会話していない生徒も見られ、全員がAをもらえる状態ではない。記入者が誰か分かる方法での相互評価は、中学生の発達段階には難しいものであることが感じられた。

 下記は、会話練習での相互評価についての感想の一部である。

相互評価をつけるのは、楽しいけど、いつもAをつけてしまう

けっこうとなりの人には、厳しくしている(男子だから)だけど、女子になると評価があまくなてしまう。

友達のだとCとかDとかをつけるわけにはいかないので、どうしてもAで、わるくてもBにする。

2 特別なコミュニケーション活動での相互評価

 (ジャッジとしての相互評価)

 2回目と4回目の検証授業では、全員の生徒の発表活動があったため、生徒全員をジャッジとしてジャッジングペーパーの観点にしたがって相互評価をさせた。ジャッジングペーパーは、公正に発表を評価するという目的以外に、発表者のよいところを見つけるというねらいももたせ、励ましやアドバイスを記述させる部分を設けた。また、その結果を教師が集計しグループごとの順位を出した。そして、ジャッジングペーパーヘの記入の様子から判断し、優秀ジャッジを選定した。加えて、全体の発表が終了した時点で「いつもよりも がんぱった人は誰ですか」「とてもうまかった人は誰ですか」の2点も記入させて生徒が一人一人についても観祭し、評価する機会を設けた。ジャッジングペーパーを点数化する作業手順は下記のとおりである。

 「優秀グループ」と「優秀ジャッジ」、「いつもよりがんばった人」、「とてもうまかった人」については賞状を準備し表彰した。また、各グループには、ジャッジングペーパーの記入者名を切り離して返却した。表彰することについては事前に予告していなかったため、1回目の表彰では全員の生徒が驚いており、表彰された生徒も素直に喜んでいた。教師との交換日記に「賞状をもらえるなんて思わなかった。中学生になって初めてもらった賞状でとてもうれしい」と書いた女子生徒がいた。また、異文化理解の発表の前の意識調査で「どのような気持ちで発表に臨みたいか」を尋ねたところ、「絶対に賞状をもらう」と書いた生徒が10名もいた。一方、異文化理解の発表後に「ジャッジングペーパーを見て悪いところを直したい」と答えている生徒もおり、生徒がこの相互評価を信頼していたことが分かる。もちろん、教師からの評価と比較すると、「優秀グルーブ」や「とてもうまかった人」についての見方は、全く同じだったわけではない。この差を埋めるために、教師の観祭から、努力が見られたグループや生徒を表彰対象として付け加えていくような配慮をしていくようにした。

 ジャッジングペーパー点数化の手順優れた発表をしたグループを選出するために、生徒がそれぞれのグループの発表の仕方や内容についてA,B,Cの3段階で評価した前半部分を点数化し集計した。Aを2点、Bを1点、CをO点としてグループごとに集計し満点(全ての生徒が全部の評価項目についてAをつけている場合)を100点に換算してグループ順位を導き出した。また、優れたジャッジをしている生徒を選定するために、それぞれのグループの発表の

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