研究紀要第94号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究」 -023/162page
「よさ」の再認識や「よさ」の伝達の手段として、生徒の学習への意欲づけになるだけでなく、教師からのアドバイスに対し抵抗を感じる生徒への有効なアドバイスになり、基礎・基本の定着にも大きな役割を果たすことが感じられた。
【相互評価についての事後アンケートでの記述】
その人に悪いかもしれないけどやはりその人のためと思って、評価している。
相手からも良かったと思われるようにがんばるようになった。他人から見た自分がわかるので、とてもいいと思う。(悪い評価をうけないようにがんばるから)
(3)教師からの評価
教師からの評価は、教師が設定した到達目標に対し、生徒がどこまで達成しているか、またその結果に対してどのようにフィードバックしていくかを考えるための材料として最も重要なものである。また、指導に生かす形成的な評価のみならず、評定をするための材料としての評価も考えなければならない。その原には、主観的な要素が強くなりすぎてはならない。そのため、今回の検証授業では、授業ごとに関心・意欲・態度の評価の観点を明確にし、それに従って評価していく方法をとった。観点については、「6授業の実際」で述べたとおりである。なお、関心・意欲・態度の評価については、発表やワークシートの記入状況から把握する場合と、日常の授業中の観察から把握する場合が考えられる。発表などの結果から判断する場合は、多くの生徒について把握できるが、授業中の観察では、観点に従って評価できる人数は限られてくる。当初3人程度を予定していたが、実際の授業では5,6人の観察ができた。生徒のコミュニケーシヨンヘの態度については、観点がしっかりしていれば比較的把握しやすいものであるが、関心・意欲は深く内面にかかわるものであり、どの程度把握できるかは不安が残る。一般に、中学生という発達段階は自分の内面を素直に表情や態度に表そうとしない時期でもある。そこで、計画的に行った自己評価や相互評価の結果から生徒の内面を把握し、フィードバ`ツクすれぱ教師の指導は深く広いものになる。フィードバックは、もちろん、文章として記述した場合には教師の配慮に生徒の心が動かされる面もあるが、言葉かけだけでも、適切な機会に与えれぱ大きな励みになる。フィードバックのための材料は多ければ多いほど、生徒に返してやることができる。それらの多くの材料の中の、生徒の「よかった」部分をほめ、「よくなかった」部分についてはそのまま触れずにいたり、あるいはアドバイスを与えたりと、柔軟に臨むことができる。
1回目の授業で教師が観察できた生徒は5名であり、それぞれの生徒について教師からの評価と他の評価を比較したものが下表である。
成績順 教師からの評価 自己評価 相互評価 F子 A A A A M子 B A A A Y男 B B A A K子 C C A B S男 B A A B
成績グルーブごとに、グループ1.一1名、グルーブ2.一2名、グループ3.一1名、グルーブ一1名である。「教師からの評価」は、授業全体を通して4.観察したもの、「自己評価」は左の記号が基本会話、右がグループ活動での評価、「相互評価」は基本会話のものになっている。
生徒の関心・意欲は、1時間の授業の流れの中で刻々と変化するものであることを考えると、単純に比較することはできない。しかし、上記データから言えることは、自己評価の方が、相互評価より厳しい傾向にあり、自己評価と教師からの評価はそれほどかけ離れてはいないということである。教師の観察は、生徒の自己評価などと評価の回数が異なるため検証授業ごとの評価の判断の比較はできないが、授業者や参観者の感想からも、