研究紀要第94号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究」 -029/162page
的に評価する評定の直接の材料である。観祭の他、ワークシートの結果等も場合によっては利用できる。
2.今回の活動等から評定材料として扱ったもの
【コミュニケーションヘの関心・意欲・態度】
○コミュニケーション活動で表れたもの
・基本会話の観察とワークシート
・フィールドワーク計画、映画の吹き替え、異文化理解の発表
・本文内容の聞き取り活動○ワークシートなどに表れたもの
【表現・理解の能力】
○コミュニケーション活動で表れたもの
・基本会話の観察とワークシート
・フィールドワーク計画、映画の吹き替え、異文化理解の発表
・本文内容の聞き取り活動○ワークシートや小テスト等に表れたもの
・ワークシート・小テスト等・発表内容(原稿や発表の観祭)【言語や文化についての知識・理解】
○コミュニケーション活動で取り扱った異文化理解の内容(アイルランドの中等教育について)
その他、今回の評定のためのデータとしては用いていないが、言語や文化についての知識・理解としては、教科書で取り扱った異文化理解の内容についての定着度を見たり、定期テスト、各種小テスト等の結果(表現・理解を含む)を見たりすることが必要であろう。また、表現の能カ、理解の能力としては定期テストの中に、表現力や理解力を測る問題を設け、その結果を参考にすることなども考慮しなけれぱならない。
次ぺ一ジ表の中で、例I・IIは、指導要録の4つの観点に加え、授業への取り組み方や提出物の様子を5つ目の評価観点として、合わせて5観点の総合成績を算出したものである。
例Iは、言語や文化についての知識・理解に若干重きを置き、ゆるやかな傾斜配点をした場合の例である。
例IIは、5つの観点に均等に配点した場合の例である。
例IIIは、4つの観点の内、従来のように知識・理解に大きく重きを置いて傾斜配点をした場合の例である。
表中の「得点」は、生徒Dの「比率」に対する達成度である。「評価」のABCは、「比率」に対して、80%以上の得点の場合「十分満足できる」と判断しA,50%以上80%未満を「おおむね満足できる」としB,50%未満を、「努力を要する」としてCと評価した。
生徒Dは、知識・理解面に関してはあまり自信がなく、積極的に挙手や発表などをすることが少なかった。どちらかというと、まじめにノートを取ったり、授業に静かに参加するタイブであり、定期テストの平均偏差値が51程度、順位が40〜70位(男子128人中)であった。しかし、今回のコミュニケーション活動には大変意欲的に取り組み、関心、態度や能力に大きな向上が見られた。また、口頭での表現能力の高まりは特に顕著であり、理解面についてもListening能力はReading能力と比較すると伸びが大きく、語彙や文章読解についての知識面が向上すれぱ、コミュニケーション能力はいっそう伸びると思われる。
例I〜IIIのそれぞれの方法で生徒Dの総合的な到達度を数値化すると、
例Iの場合は74点
例II〃80点
例III〃67点
となる。傾斜配点については様々な考え方があるが、これらは、従来の評定値算出の方法を改善するための一つの提案である。実際には各学校の生徒の実態に応じて工夫することが望まれるだろう。
このようにして算出した結果を基に相対評価で5段階に評定すれぱ、観点別学習状況の評価を生かした新しい学力観に基づく評定ができ、同時に生徒にもはっきりした目標を与えられる評価になると考える。