研究紀要第94号 「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究」 -031/162page

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 なお、一人一人の個人内評価と伸長度については、所見欄を活用したい。

III 外国語科(英語)における実践のまとめ

 1 研究の成果

 今回の取り組みは、様々なコミュニケーション活動とそれに対する評価を計画的に行うことによって、生徒が自分自身の「よさ」に自ら気づいたり、教師がそれぞれの評価に表れる生徒の「よさ」を的確に把握しフィードバックを行い、生徒のコミュニケーションに対する関心・意欲・態度を伸ぱそうとするものであった。

 実践では、教師からの評価、自己評価、相互評価を行ったが、自己評価の結果を見ると、最初は機械的に記号選択をし、いい加減に評価していた生徒が、徐々に目分にとって厳しい評価をするようになり、いつのまにか自分を励まそうとするものに変わっていった。そして相互評価の結果も、ジャッジとして責任のある役割を果たすことにより、クラスメートを温かく励ましたり、あるいは遠慮なく厳しく見つめる目を養っていった。これらの評価から得た材料と、事前に設定した評価の観点を基にとらえた教師からの評価の結果を、教師が適切にフィードバックしたことによって、積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとする意欲が伸び、態度の向上が見られた。また、自己評価や相互評価の結果を教師が真剣に見るというだけで、生徒の自己評価や相互評価は練り上げられていくものであることも感じた。

 コミュニケーション活動は4通り行い、その中で1単位時間だけの活動ではなく、複数の時間を用いた活動も行った。これは、従来の週3時間の授業では困難であるが、週4時間を使用できる現状を十分に利用することを前提として立案したものである。年間の35時間を、テキストの補充や深化に20時間程度、残りの15時間を特別なコミュニケーション活動という計画で考えた。15時間あれぱ、年間4,5回の今回のようなコミュ ニケーション活動は可能ではないかと思われる。それぞれのコミュニケーション活動に、コミュニケーション能力を高めるための明確な目的と手だてがあれば、それは、表現・理解の能力のみならず、言語や文化に対する知識・理解のいわゆる言語運用能力の向上も促すものであろう。

 今回の研究で表れた情意面の伸びが、コミュニケーション能力の向上も十分に促したとは一概に言えない。コミュニケーション能力は、中学生段階の基礎的な言語に対する知識や運用力の定着に伴って伸びていくものであり、向上には時間もかかるものである。しかし、一つのステップとして情意面に目を向けていくことは、コミュニケーション能力の向上のために有効なものであると考えられる。

 2 今後の課題

 今回の実践を通して、今後の課題として2点あげられる。一つは、特別なコミュニケーション活動で高められた関心・意欲・態度を、テキストを使用した通常の授業の中でどう持続させていくかという問題である。今回のテキストを使用した指導は、準備に時間が大分かかっており、このような活動を毎時間行うのは容易ではない。しかし、まず毎時間の授業の中に、コミュニカティブな指導を少しずつ取り入れていくことが改善の基本であり、このような手だての継続が、一度高められた生徒の関心・意欲・態度を持続させることにつながると思われる。

 二つ目は、教師が児童生徒の自己評価・相互評価の結果を評定にどのように生かしていくかという問題である。今回の実践は、教師にとって直接には観察しにくい児童生徒の心の動きや多様な「よさ」などをとらえる上で、自己評価や相互評価が一定の役割を果たしうることを示している。しかし、評定には特に客観性が強く求められるため、自己評価や相互評価の結果の全てを、直接に評定の材料とすることができないのは明らかである。特に、関心や意欲などについては、確実に把握できたと判断できる部分のみを評定に生かし、それ以外はあくまでもフィードバックの材料とし


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