平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -098/156page
動の基盤となる間接体験で得た知識などが,直接体験によって,さらに内面化し,その子なりの理解に至るものと考えられる。このことが,「表現活動の特性を生かす指導」の前提条件になると考えた。
(4) 表現力を高める自己評価・相互評価の在り方
山口満氏は,表現活動の特色について,「自発的・個性的な活動であり,他者とのかかわりの中で深化,発展する活動である。」と述べている。
このことから,表現活動の評価は,他者とのかかわりを前提とし,自発的な表現意欲に基づく個性的な表現内容や意味に着目することが大切であり,また,表現活動を通じて,他の考えのよさを受け入れ,新しい自己を創造していくものであると考える。
また,安彦忠彦氏は,自己評価と他者評価の関係について,「自己評価は,単なる自分だけの評価から,他者評価を取り入れて一段高い質の自己評価に高まらなければならない。」と述べている。
これらのことから,個々の児童の個性的な表現や意味に着目させるためには,相互評価と自己評価を別々にとらえるのではなく,補完する関係,つまり一体としてとらえることが大切であると考えた。
そこで,表現する段階で,まず,他者とかかわることができる相互評価を行い,次に,それを基にした自己評価を行うようにした。このことは,自己の表現活動の特性を自覚させ,伸長させることにもつながるものと考える。
なお,自己評価カードは,表現力や情意面の要素の分析を基に作成し,毎時間活用することにした。また,相互評価カードを活用する場合には,児童に,お互いの評価する観点(表現意欲,創造力,説得力,応用力)を具体的に理解させるようにした。
相互評価カード
自己評価カード
これまで述べた基本的な考えを基に,「表現力を高める指導の全体構造」を次のように考えた。
(1) 児童一人一人の表現活動の特性及び単元の学習内容に関する実態把握 [図−(1)]
1) (実態調査については,前述したので省略)
2) 検証授業単元の学習内容について,事前に診断テストを実施し,児童一人一人の学習内容に関する実態を把握することにより,指導の重点化を図る。
(2) オリェンテーション [図−(2)]
ここでは,「学習の進め方」のプリントや児童の作品などを基に,学習の仕方の具体的なイメージ化を図る。
(3) 共通課題の設定 [図−(3)]
課題意識を醸成する教材は,知的好奇心や興味を高め,内発的学習意欲を喚起できるようなものでなければならない。そのためには,十分な社会的事実の認識をさせながら,共通課題を設定し,内発的な動機に基づく表現意欲を高めさせる。
なお,学習課題の把握のチェックをし,把握が不十分な児童に対しては,援助・支援を十分に行うようにする。