平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -102/156page
ことから,表現力の特性は,今までの表現活動の経験と深い関連性があるということが分かった。
また,調査結果(表1)や今までの授業における表現方法の傾向から,個人毎のカルテを作成し,個々の特性の把捏に努めた。
表1(表現活動にかかわる特性の調査結果)
2 (好き), 1 (ふつう), 0 (きらい)
番 新聞 絵地図 OHP ビデオ コンピュータ 劇 模型 1 0 1 2 2 2 1 2 2 0 1 1 2 2 0 0 3 2 1 2 2 0 2 1 4 2 0 1 2 1 1 1 5 2 1 2 2 2 0 1 6 1 1 2 2 1 1 1 この諸調査で得られた結果は,コンピュータによる表現活動を指導過程に取り入れるなど,表現活動を組織する上で有効な判断材料となった。
(2) 特性を生かす指導が表現力に与える影響
1) 自己評価カードの分析から(明治維新)
抽出児の3人は,いずれも表現活動の時間(8・9時)の自己評価の得点が高くなっている。(グラフ2)また,感想からも,児童が,意欲的に表現活動に取り組んだことが分かる。
抽出児の感想
U男 劇をエ夫してよくできた。(劇で表現)
I男 士族や明治維新を進めた人の考えを知ることができた。(ビデオで表現)
T子 士族の反乱について,よくわかった。(新聞で表現)2) アンケート調査から
自己選択を取り入れて行った結果,はとんどの児童が表現しやすくいと考えている。(グラフ3)これは,表現方法を自分で選択することが,表現意欲向上の要因の1つになっていることと深くかかわっているものと思われる。(グラフ4)また,その結果として,表現に必要な知識・技能(メディアリテラシー)も高まってきたのではないかと推察される。(グラフ5)
3) 調査結果や作品内容の分析から(明治維新)
(ア) イメージマップの調査結果の分析から
イメージマップを分析した結果,児童の明治維新に対するイメージは,下記のはぼ3つを中心にまとめられていた。また,事柄の関係づけを見てみると,単なる断片的な知識としてとらえているのではなく,時代を構造的にとらえている児童が多く見られた。
明治政府中心 (45%)
版籍奉還中心 (39%)
文明開化中心 (16%)
(調査人数38人)(イ) 新聞のイラストの分析から
イラストに書かれてある明治維新についての見方を探った結果,イラストの内容から,表現の多様さのみならず,児童一人一人の時代のイメージを自分の言葉として再構成しているのが分かった。このことから,時代を様々な立場から多面的に見ることができる素地が芽生えてきていると考えられる。