平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -104/156page

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考えられる。このことから,相互評価の後に自己評価を行うことは,自己の表現活動のよさについての理解を深め,表現意欲の向上に効果があると考える。

2) アンケート調査から

 下記の調査結果や感想から,次のようなことが分かった。相互評価活動は,(ア)自分の表現活動のよさを再発見でき, またそのきっかけになる(イ)友だちの発表を真剣に聞く(ウ)自分の考えを再考できるなどの効果があることが分かった。(グラフ8)また,新しい自分の考えをつくることにも役立っことも分かった。           (感想, グラフ9)

グラフ8

「こんなとこよかったよカード」はよさを見つけるのに役立つか
グラフ8「こんなとこよかったよカード」はよさを見つけるのに役立つか

グラフ9

「こんなとこよかったよカード」は自分の新しい考えをつくるのに役立つか
グラフ9「こんなとこよかったよカード」は自分の新しい考えをつくるのに役立つか

グラフ9の主なわけ
○ 自分より友だちの方がもっとよいところを見つけてくれたから。

○頭を回転させ,友だちの発表を聞けた。

○自分の考えをまとめられる。

自己評価の感想
自己評価の感想

 以上のことから,相互評価の後に自己評価を行うことは,自分のよさを成就感や満足感をもって自覚することにつながり,次の学習への表現意欲や「説得力」・「応用力」の向上に寄与できたのではないかと思われる。

VI 研究のまとめ

1 研究の成果

(1) 児童の表現活動の特性を把握し,それを生かす表現活動を組織することによって,「表現意欲」や「創造力,説得力」の向上に寄与することができる。特に,学習メディアを活用した表現方法を自分で選択することは,「表現意欲」向上の重要な要因の1っとして働くことが分かった。この点で,「表現活動の特性の類型化」は,有効であった。

(2) 学習過程の中に「直接体験」を位置づけることは,具体的なイメージを伴った共感的な理解を促進し,表現内容の創造に効果的に働くことが分かった。

(3) 「相互評価を行った後に自己評価を行うこと」は,自己の表現活動の特性やよさをより客観的に自覚できるとともに,相手の考えを受け入れ,自分なりの考えを創造することに寄与することができる。

(4) 表現力の要素を明らかにし,「指導の全体構造」を作成することは,表現活動が展開するまでの指導・援助の方針が明確になり,各要素に応じた手だてを学習活動全体の中で,効果的に行うことができる。その際,知識の獲得による思考力や判断力の育成の場である,確かな課題把握に基づく課題追究の場や直接体験,表現活動の場を十分に保証することは,表現力育成の大切な条件の1っと考えられる。

2 今後の課題

(1) 学年に応じたメディアリテラシーの在り方を,表現力との関連から探っていきたい。

(2) 「他の考えを受け入れ,新しい考えをつくり上げる力」(応用力)を向上させるためには,今後,さらに継続的な評価活動を実践していく必要がある。

(3) 直接体験への意欲を喚起するために,直接体験に発展する教材を系統的に準備する必要がある。

(4) 児童の表現活動の特性の幅を広げるために,多様な表現活動の工夫を積み重ねていきたい。

 最後に,この研究にご協力していただいた高畑睦雄先生(現行仁小学校長),門田小学校長新井田滋雄先生,同校教諭白井秀樹先生に,厚くお礼を申し上げます。

註・参考文献

1) 初等教育資料No570
個性を生かす先生:(加藤幸次)図書文化
学習スタイルを生かす先生:(辰野千寿)図書文化
教育工学実践研究No113:教育工学研究協議会
自己評価:(安彦忠彦)図書文化
新しい情報教育を創造する:(田申博之他共書)
メディアが開く新しい教育:(水越敏行)学研
表現力・実践力を育てる:(家田哲夫)東洋館出版
教職研修実践ハンドブックNo4:教育開発研究所
指導と評価Vo38,140:日本教育評価研究会
初等教育資料:No556,570,617,619,622,624
個性を生かす教育メディア:教育工学研究協議会
大和田南小研究紀要14集
社会科の授業評価:(水越敏行編)明治図書


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