平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -105/156page

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主体的な眼を育てる美術の鑑賞指導

  〜ワークシート教材の開発と実践報告〜

長期研究員 菅 野 哲 哉

研究の概要

 主体的に造形作品を見る態度や能力を育てる指導の在り方を追究するため,「生徒一人一人の『作品などを見る主体的な視点』を引き出し,それを生かしながら,作品の見方を拡げ深める造形活動を促すとともに,その楽しさを昧わわせるような指導」を,次のような手だてによって工夫し,授業を行った。

1) 生徒一人一人の「作品などを見る主体的な視点(観点)」を引き出し,それを生かした「視覚的な」思考を促すような,作品を味わうためのアプローチの体験モデルとしての教材の作成

2) 作品を見る多様な視点に気づかせるなかで,作品の見方を拡げ深めるとともに,その楽しさを味わわせるような指導過程の工夫

 その結果,以下のような成果を得ることができた。

1) 作品についての「問いかけ」や「誘いかけ」を主とした教材を用いた体験的・操作的な学習活動の有効性及び実践上の留意点

2) 作品などを見る視点や見方についての生徒相互の「認め合い」や「磨き合い」の場を位置づけた指導過程の有効性及び教師による支援の在り方

はじめに

 美術館などの充実や各種メディアによる作品の紹介などによって,我々が多様な美術作品を手軽に鑑賞する機会が増えっつある現在,これまでの美術教育を再構築していこうという大きな動きのなかで,鑑賞指導の在り方が改めて問われている。

 学校におけるこれまでの美術の鑑賞指導は,表現活動に付随したかたちで,主として知識・理解面に偏った指導が,教師主導で行われる傾向があった。
しかし,鑑賞とは本来,自分なりの見方や感じ方で作品を見たり考えたりしながら,作品を味わう能動的な行為である。今後の鑑賞指導は,学ぶ主体である児童生徒の視点に立ち,主体的で創造的な鑑賞の態度や能力の育成を重視して行われなければならない。すなわち,児童生徒一人一人の興味・関心などに即応しながら,自分なりの見方や感じ方で作品を見る楽しさや,自分で考える喜びを味わわせるなかで,主体的な見方や感じ方を大切にし,自らそれをふくらませ,深めていくような態度や能力の育成へと指導の力点を移していかなければならないと考える。

 本研究は,このような美術の鑑賞指導における課題を踏まえ,高等学校芸術科美術において「造形作品を見る主体的な態度や能力を育てる」ための指導の在り方と,その具体的な手だてを追究するものである。

I 研究の視点

1 基本指針

 鑑賞指導の現状と課題を探るために行った生徒の意識調査の結果,及びこれまでの授業実践の評価を踏まえ,さらに,多くの提言や実践などを参考にしながら「造形作品を見る主体的な態度や育助の育成」に向けた授業改善のための基本的指針を次のように設定した。


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