平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -106/156page

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生徒一人一人の「作品などを見る主体的な視点」を引き出し,それを生かしながら,作品の見方を拡げ,深める造形活動を促すとともに,その楽しさを味わわせるような指導の工夫

 「造形作品を見る主体的な態度や能力」は,見ることや造形作品への興味・関心,主体的に感じとる力や考える力などの資質や能力を中心とし,それらによって深められ,それらを高めるものとしての知識などを含む統合的な学力と考えることができる。

 このような態度や能力は,生徒一人一人が作品などを見る自分なりの視点(観点)」を持つとともに,それを生かして,その視点を拡げ深めるような造形活動を体験するなかで形成されていくと考えられる。また,このような造形活動の充実を楽しみ,味わうなかで,「見ることや造形作品への興味・関心」も高められると考えた。

2 具体的な方策の考え方

(1) 教材作成の視点

生徒一人一人の新鮮な視点(観点)を引き出し,それを生かした「視覚的な」思考を促すような,作品を味わうための多様なアプローチの体験モデルとしての教材の作成

○ 生徒一人一人の率直な「気づき(感受)」や「思考」を引き出す手だての工夫

○ 視覚的,体験的に感じ,考えさせるような手だての工夫

 鑑賞活動の始まりは,作品についての率直な驚きや疑問,自由な想像などをもたらす,生徒一人一人にとっての新鮮な体験である。そして,そのような体験が,生徒なりの率直な「気づき(感受)」や思考などに基づく,作品への主体的なアプローチを準備すると言える。

 したがって,本研究では,作品についての生徒一人一人の新鮮な視点を引き出す視覚体験などを仕組み,生徒なりの見方や感じ方による率直な「気づき(感受)」や多様な「思考」を促すとともに,作品へのアプローチの実際としての活動を体験させるような,生徒と作品などを媒介する具体的な手だてを工夫したツールとしての教材を構想し,作成した。

 さらに,優れた作品は,作者の感性や直観などのいわば「非言語的」思考によって生み出されたものである。したがって,生徒の活動は,可能な限り非言語的な思考や直観に基づいたものとなるのが望ましく,また,そのような「非言語的」な思考力を育てる意味においても,視覚的で体験的(操作的)な活動を促す教材となるように努めた。

(2) 指導過程立案の視点

作品を見る多様な視点に気づかせるなかで,作品の見方・とらえ方を拡げ,深めるような指導過程の工夫

○ 生徒一人一人の「気づき(感受)」や「思考」を引き出す場の位置づけ

○ 生徒一人一人の「気づき(感受)」や「思考」を生かしながら,それを拡げ,深めるための生徒相互の「認め合い」や「磨き合い」の場の位置づけ

 上に述べたような教材は,「気づかせる」,「考えさせる」などの,指導プログラムとしての手だての一部を含み込んだものであると言える。したがって,それを用いた指導過程は,そのような教材によって引き出された生徒一人一人の「気づき(感受)」や「思考」を生かしながら,それらを拡げ深めさせていくことを重視して構想されるべきであろうと考えた。すなわち,本研究では,「気づき(感受)」や「思考」を引き出す場や,生徒相互の「認め合い」や「磨き合い」のなかで,それらを拡げ深めさせていく場を明確に位置づけた指導過程を構想した。


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