平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -107/156page
II 研究の実際
教材として,対象作品についての「問いかけ」及び「誘いかけ」を内容とする,プリント形式の鑑賞ワークシートを作成し,それを用いた指導過程を立案し,授業を行った。
鑑賞対象作品には,使用教科書である「美術1」(光村図書刊)掲載の絵画作品の中から5点を選んだ。
1 ワークシートの作成
ワークシートは,次のように全体を構成した。
「ワークシート1」では,対象作品などについての「問いかけ」や「誘いかけ」によって,生徒一人一人の率直な視点や見方を引き出すようにした。
「ワークシート2」では,対象作品として「トイレと窓」のみを取り上げ,「ワークシート1」での回答結果をもとにした話し合いなどによって,それらを拡げたり深めたりした自分なりの作品の読みとりを,生徒なりに表現させることとした。
「ワークシート1」の作成に当たっては,次のような点に留意した。
○ 生徒の,作品への注視を促すものであること。
○ 作品などを見る「視点(観点)」の重要さと多様さに気づかせるものであること。
○ 生徒の着目点に応じて,作品の多様なとらえ方を引き出すものであること。
○ 生徒の見方や感じ方が,生徒それぞれの工夫で表現されるものであること。
○ 「問いかけ」や「誘いかけ」のみを与え,一定の答えを求めるものでないこと。
「ワークシート1」は次の5っのパートで構成し,それぞれ対象作品などの図像とそれについての簡潔な「問いかけ」や「誘いかけ」の文章を組み合わせて作成した。
1) 「ウォーミングアップ」
様々な動物のシルエットを並べ,それらの分類のしかたを考えさせる「分類ゲーム」を通して,「見る」際の視点(観点)の重要さと多様さに気づかせるためのもの。
2) 「見つけよう!」(対象作品:「静物」ジョルジオ:モランディ)
対象作品とそれをコンピュータで画像処理したものを比較させ,その効果の違いから作品を見る視点を引き出すとともに,表現意図などについて考えさせるもの。