平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -111/156page
方ができる」,「いろいろな考えがあって面白い」,「自由に空想して答えられる」などが多く挙げられていた。一方,「見つけよう!」と「探してみよう!」の各問いについては, 「よくわからなかった」,「難しかった」などの理由で,面白くなかったと答えた生徒が多かった。
「ワークシート2」の演習については,「他の人のいろいろな見方がわかった」,「自分の見方が否定されない」,「自由にできて,退屈しなかった」などの理由で,8割以上の生徒が面白かったと答えている。
2) 授業全体についての感想
これまでの鑑賞の授業と違う点については,「遊び感覚で取り組めるところ」を選択した生徒が最も多い反面,「難しくないところ」と答えた生徒は最も少なかった。また,「自分の見方で作品を味わうところ」及び「知識・解説中心でないところ」を選択した生徒も比較的多かった。
また,「その他」の記述のなかに「他人の見方がストレートに伝わってくるような授業だった」という感想も見られた。
さらに,約6割の生徒が,「自分の見方やいろいろな見方で作品を見れば楽しいことがわかった」,「ただ見るのでなく考えて見るようになった」などの理由で,この授業によって作品などについての見方や味わい方が変わったと思うと答えている。また,8割を超える生徒が,このような授業をまたやってみたいと答えている。
4 考察
(1) 生徒一人一人の「作品なとを見る主体的な視点(観点)」を引き出すことについて
「ワークシート1」における生徒の回答は,稚拙な表現ではあるものの実に多様でユニークなものが多かった。事後アンケートで,6割を越える生徒が「自分の率直な感じ方や見方を表現できた」と答えていることも考え合わせると,自分なりの視点を見い出し,率直な印象やとらえ方によって作品を見ていった生徒が少なくなかったことがわかる。これらのことは,「ワークシート1」のような一定の答えを求めない「問いかけ」や「誘いかけ」などの手法が,生徒の,作品を見る自由で主体的な視点を引き出すのに効果的であることを示していると思われる。特に,「やってみよう!」のような描画などを促す「誘いかけ」は,事後アンケートでも「自分で自由にいろいろな答えができる」ために面白かったと答えた生徒が多かったことから,生徒本来の率直で想像性豊かな感性による視点や見方を引き出す,楽しい活動を促す手法として非常に有効であると思われる。
一方,「見つけよう!」や「探してみよう!」の回答は,「やってみよう!」, 「何だろう?」,「ウォーミングアップ」の回答に比べてやや多様さに欠けたものであり,事後アンケートでも,これらの問いについて「よくわからない」という理由で面白くなかったと答えた生徒が多かった。漠然として抽象的な「問いかけ」は,多くの生徒にとって答えにくいものであったようである。したがって,生徒の主体的な視点や見方を引き出すためには,できるだけ具体的で,生徒の想像力を刺激し,ある程度操作性のある「問いかけ」や「誘いかけ」を工夫する必要があると言えよう。
(2) 生徒一人一人の作品などの見方を拡げ深める造形活動を促すことについて
「ワークシート2」の回答に見られる作品理解の拡がりと深まりは,生徒たちが,教師のアドバイスや友人の多様な視点や見方に触発されつつ自分なりの見方を検討し,ふくらませていった結果と考えられる。事後アンケートで,8割以上の生徒がこの活動が面白かったと答え,その理由として「他の人のいろいろな見方がわかった」と答えている生徒が多いこともこのことを裏付けると思われる。生徒相互の「認め合い」や「磨き合い」の場における,友人