平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -116/156page
てるとともに基本的な概念や原理・法則を理解させ,科学的な自然観を育成する。
さらに,内容の取り扱いに関して,物理的な探究の方法のいくつかを具体的に例示しながら,それらの習得を通して科学的な思考力,判断力及び表現力を育成するものとする,と述べている。「探究活動」は上記目標の,探究する能力と態度を育てるという部分に関係するが,単に技法的な科学の方法の習得にとどまるのではなく,「探究活動」を通して基本的な科学概念や原理・法則を理解させることまで含めてねらいとしている。
従って「探究活動」は, 『個々の活動では生徒が主体的に活動して知識を獲得し,自然を調べていくのに必要な探究能カを身に付けさせることをねらいとしながら,これらの活動を繰り返し行っていくなかで基本的な科学概念の形成を図り,さらに,未知の自然を探究しようとする積極的な態度を育てていくことをねらいとする学習活動』 と,とらえることができる。
自然の事象を科学的に探究する能力を身に付けることは,いろいろな面で問題解決に役立つものと考えられる。
このように「探究活動」で育成しようとする能力や態度は,自ら学ぶ意欲や態度,技能や表現力,思考力,判断力など,新学習指導要領が目指す新しい学力観と深くかかわっている。この研究では「探究活動」を,理科において新しい学力を育成するための有効な活動と位置付けた。
2 「探究活動」の進め方
「探究活動」は具体的には,観察,実験という形態で行われる。一般に生徒実験は,実験の方法からデータの処理の仕方まで教師がプリントなどで示し,生徒は指示通りに,あまり問題意識ももたずデータを書き込むだけで終わってしまうということが多かった。これに対し,「探究活動」は,実験の計画から報告書の作成まで,できるだけ生徒自身に主体的に取り組ませることによって,自然の事象を科学的に探究する方法を習得させ,問題を解決する能力や態度を育成しようとするものである。
従来の物理実験では,生徒が参加するのは測定の場面からで,生徒にとって,物理実験イコール測定のように思われている面もある。「探究活動」では,測定に至る前の段階も測定の後の段階も重視し,これら一連の過程を体験させることが大切になる。
(117ぺ一ジ,表2)ただ,一っの実験に探究の方法がすべて含まれている必要はなく,最終的にこれらの探究の方法のいくつかが体験できればよいと考えられる。これについては,事前に実験のねらいや内容,生徒が主体的に取り組む部分の割合の大小などから,「探究活動」をいくつかのレベルに分類しておくと大変役に立つ。従来行われている生徒実験と同じテーマの実験であっても,生徒の主体的な学習活動になるように,工夫,展開していけば「探究活動」のねらいは十分達せられる。
具体的な方法として,従来の実験の時間の前後にそれぞれ1時間を確保して,表1のように基本的に3段階,3時間を単位として実施することにした。前後の時間を生かすことによって「探究活動」の効果をあげることができる。
表1「探究活動」の段階
探 究
活
動
計画・準備の段階 ↓ (1時間) 測定・処理の段階 ↓ (1時間) 考察・まとめの段階 (1時間) 次に,実際に「探究活動」を進めるに当たって留意すべき点をあげる。
(1) 生徒が主体的に取り組めるよう,できるだけ自由度の高い,多様な展開が可能な実験を選ぶ。
(2) 実験テーマごとに,その内容を「探究活動」という点から分析し,この実験では主に何を体験させ,何を身に付けさせるのかを明らかにしておく。また,それぞれ評価の観点を作成しておく。
(3) 必要な事項については前もって指導しておく。
(4) 課題意識あるいは予想をもたせてから実験や測定を行わせるようにする。
(5) 考える時間や,議論する時間を十分に確保する。