平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -118/156page
きた傾向がある。実験の評価についても,結果のよしあしや報告書の提出の有無程度の評価で,あまり積極的に評価されなかったのではないかと思われる。
実験や観察では教室での授業とは違って,生徒の個性,特に,関心・意欲・態度や,技能・表現力など,その情意的側面や技能的側面がよく現れるものである。「探究活動」では,ぺ一パーテストでは測ることが難しい,これらの能力や態度の評価を積極的に行っていく必要がある。さらにその評価を科目の評定に取り入れていくことが大切である。
学習内容の理解や定着の度合いを測るぺ一パーテストなどの評価と「探究活動」の評価との量的配分などの問題は,生徒の実態などによっても違ってくると思われるが,ここでは,「探究活動」の評価が「物理IB」の評定に十分生かされることを前提に「探究活動」の評価の方法について考える。
(1) 評価の観点
「探究活動」を通して育成したい能力や態度を表3のような5つの側面でとらえた。
表3 評価の観点
1) 関心・意欲・態度 2) 思考・判断 3) 技能・表現 4) 知識・理解 5) 創意・工夫 1)〜4)は新しい学力観に基づく指導要録の評価の4っの観点に相当する。5)の創意・工夫は他の4っの能力や態度とも深いかかわりをもつものであるが,創意・工夫する姿勢やすぐれた発想などは物理の実験において特に期待され,また,育てていきたい能力や態度であるととらえ,別に取り上げた。これら5っを,「探究活動」を評価するときの観点とした。
(2) 評価の方法
評価の資料としては次のようなものが考えられる。
1) 実験報告書(レポート)
2) 生徒の学習活動の観察記録
3) 生徒の自己評価や相互評価
4) 観察,実験に関する小テストや調査など
4)については実施する必要がない場合も考えられるので,ここでは 1),2)を中心に,3)を参考に活用して評価し,その結果を数量化する方法を考えた。
評価資料と観点の関係及び観点別,資料別の配点の案を表4に示す。
表4 「探究活動」評価表
実験テーマ[ ] 年 組 番 氏名
資料\観点 関心・意欲・態度
(30点)思考・判断
(10点)技能・表現
(25点)知識・理解
(10点)創意・工夫
(25点)資料別の得点
1)実験報告書
(60点)
/10
/10
/15
/10
/15
/602)観察記録
(30点)
/10*
/10*
/10
/303)自己評価等
(10点)
/10* * * *
/10観点別の得点
/30
/10
/25
/10
/25総合
/100実験報告書はすべての観点から,観察記録は「関心・意欲・態度」,「技能・表現」,「創意・工夫」の3っの観点から,自己評価や相互評価は「関心・意欲・態度」の観点からみていくことにした。全体として,「関心・意欲・態度」, 「技能・表現」,「創意・工夫」の配点を多く,情意面,技能面を重視した評価をするようにした。各資料の観点別の配点の満点を表4のようにし,合計が100点になるようにした。各観点別の評価は3段階で行い,表5のように配点することにした。
表5 3段階評価の配点
満点 十分に満足 おおむね満足 努力を要する 15点 A (15点) B (10点) C (5点) 10点 A (10点) B (7点) C (3点) すべての評価がBの場合,総合得点は69点,すべてCの場合は31点となり,配点はおおむね妥当であると思う。
実験を行う度にこのような個人の評価表を作成しておけば,観察記録については長期にわたりデータを蓄積してから評価することもできるし,「探究活動」以外のぺ一パーテストなどを加えて観点別に評価を行う場合にも活用できる。
なお,「探究活動」の評価の方針や評価の方法が決まったら,学習の始めに生徒に示し理解を図っておくことが必要である。