平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -123/156page

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 図3は「関心・意欲・態度」の観点について,教師の観察による評価(3段階評価)結果別にみた生徒の自己評価(5段階評価)の度数分布図である。

図3 教師の評価と生徒の自己評価の比較
教師の評価と生徒の自己評価の比較

 これによると,教師の評価がA段階の生徒でも自己評価では3.0から4.9まで広がって分布していることがわかる。また,C段階の2人の生徒も自己評価は3.8で,実験がどんな結果になるか楽しみで面白かったと回答している。観察による評価は具体的行動や発言など,表に現れたもので評価されがちなので,生徒の気持ちや意気込みなど,内面的な部分を推し量ることは難しい。この意昧で生徒の自己評価を参考にすることは極めて意味がある。

(4) ぺ一パーテストの成績との関係について

 「探究活動」の総合得点と「探究活動」を行う直前の定期考査の成績との関係を調べた。図4は事例1事例2について両者の評価点を比較したものである。
ただし,テスト問題は「探究活動」の内容と直接には関係しない。

図4 「探究活動」の評価と「定期考査」の評価の関係

事例1 (61人)
「探究活動」の評価と「定期考査」の評価の関係 事例1

事例2 (16人)
「探究活動」の評価と「定期考査」の評価の関係 事例2

 どちらの事例も,両者の成績の間にあまり相関はみられなかった。事例1では,定期考査の成績上位者の中にも「探究活動」では平均を下回る生徒がかなりいること,反対に,定期考査が平均点以下の生徒でも何人かの生徒は「探究活動」でよい評価を得ていること,事例2では,定期考査の成績が極端に低い生徒でも「探究活動」ではまずまずの評価を得ていることなどがわかる。これらのことは,今回実施した観点別の評価方法で,生徒のもっている能力や態度の,ぺ一パーテストでは測れない部分を評価できたことを示している。ぺ一パーテストの成績では下位の生徒でも「探究活動」ではその能力を発揮しているのである。理科ではこのような能力や態度を積極的に評価し,育てていくことが大切である。

(5) 授業担当者の感想

 「探究活動」の指導を実践していただいた2名の先生方の感想をあげておく。

・ 活動の様子を生徒一人一人について教師一人で評価するのは困難である。指導者を複数にするか,チェック項目を限定するのが現実的である。

・ 実験の評価と定期考査の素点の間に相関があまりないとすれば,試験の点数以外から生徒の能力を評価できたことになる。

・ 実験を行うことにより,学習内容についての自分の理解度がより実感できる。

・ 生徒の実験に対するセンスのようなものは,いわゆる学力とは必ずしも一致しないのではないか。実験を通してぺ一パーテストでは測れない面を評価してやることは大切であり,理科はそれができる教科であることを実感した。


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