平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -124/156page
V 研究のまとめと考察
1 研究で明らかになったこと
(1) 「探究活動」のとらえ方について
1) 「探究活動」は自然の事象について基本的概念や原理・法則を理解させるとともに,自然を探究する能力や態度を育てることをねらいとする生徒の主体的な活動である。
2) 「探究活動」は新学習指導要領が目指す新しい観点からの学力を,理科において育成するための有効な活動であると位置付けられる。
(2) 「探究活動」の進め方について
1) 「探究活動」を進めるに当たっては,生徒が主体的に取り組めるような工夫と配慮が必要である。
2) 「探究活動」を計画・準備,測定・処理,考察・まとめの3段階で各1時間,3時間を単位として実施したら,思考する時間が確保され,生徒が主体的に取り組むようになった。また,それによって,理解度も深まり,基礎的,基本的事項を定着させるうえでも効果があった。
(3) 「探究活動」の評価について
1) 「探究活動」の評価は,実験報告書,観察記録,自己評価など複数の資料を基に,観点別に数量化して行う必要がある。その際,情意面の評価を重視し,3段階評価を基本とした100点法で行ったら,生徒の個性がよく把握できた。
2) 「関心・意欲・態度」の観点についての教師の観察による評価と生徒の自己評価は必ずしも一致しなかった。生徒の内面的な部分は観察からとらえにくく,自己評価が大変参考になった。
3) 上記1)の評価方法による「探究活動」の総合得点と定期考査の成績の関係について,今回の二っの事例では,大きな相関はみられなかった。
このことは,「探究活動」ではぺ一パーテストでは測れない生徒の能力や態度が発揮されていることを示している。2 今後の課題
(1) 生徒が主体的に取り組めるような「探究活動」の事例の開発
(2) 評価結果の数量化の妥当性の検討
(3) 評価データの収集,処理方法の簡略化
(4) 個人の変容のとらえ方
(5) 「探究活動」の評価を重視した「物理IB」の評定のあり方
VI おわりに
「探究活動」を限られた時間の中でいかに効果的に行っていくか,「探究活動」の評価を「物理IB」の評定にどのように取り入れていくかなどは,年間の指導計画を立てるときに考えておく必要がある。
4っの分野から少なくとも各1〜2のテーマについてこのような「探究活動」を実施していきたい。よく計画,準備された「探究活動」を生徒自らが積極的に,繰り返し行っていくなかで,自然の事象に対する理解を深め,自然を探究する能力や態度を身に付けていくものと思われる。
最後に,本研究を進めるに当たって「探究活動」を授業で実践していただき,さらに資料の収集,分析にも加わっていただいた,福島県立安積高等学校教諭渡辺 望,会川秀明両先生に心から感謝いたします。
参 考 文 献
1) 文部省:高等学校学習指導要領解説 理科編・理数編(実教出版1989)
2) 文部省:中学校理科指導資料 理科における学習指導と評価の工夫・改善(大日本図書1993)
3) 福島県教育委員会:指導資料第27集 個性の伸長を図るための学習指導法の改善(1989)
4) 福島県教育委員会:指導資料第31集 学力向上の視点と実践(1992)
5) 東京都立教育研究所:高等学校物理IBにおける「探究活動」に関する研究(1992)
6) 千葉県総合教育センター:新高等学校学習指導要領における「探究活動」の開発(1993)
7) 富山県総合教育センター:理科に関する学習指導法の研究(1994)
8) 福島SSE研究会:学習意欲を育てる評定法の創造(1983)
9) 高等学校「物理IB」教科書(各出版杜発行)