平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -135/156page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

生徒の二次欲求を生かし,よりよい方向へ充足させる教育相談的な指導の在り方

−教育相談的指導に立った国語科学習の一実践−

長期研究員 國 分 敏 昭

研究の概要

 本研究のねらいは,教育相談的な指導を行ったときに,生徒の内面にどのような変化が表れ,どれほどの生活の充実を生み,自己の発揮がなされていくか,その成果を求めながら,実践するところにある。
しかも,人間のもつ欲求エネルギーの中から生徒の二次欲求を取り上げ,これを生かし,生徒が意欲的に生活するための力を生み出す指導の在り方を明らかにするものである。

 前年度までは,小規模校少人数を対象にした教育相談的な指導を実践し,指導の有効性を見るとともに研究に対する考え方を明確にすることができた。また,多人数学級においては,どこまで日常化した形で教育相談的な指導の効果をあげることができるか,その指導の在り方について研究を深めることができた。

 こうした研究の積み重ねによって,本年度の研究では,国語科学習に,前年度までの成果を踏まえての教育相談的な考え方を組み入れた。積極的,肯定的に生徒にかかわり,子供の発したものを受け入れながら,望ましい人間関係をつくっていく中で,自己表出を一層促進するなど,生徒一人一人の二次欲求を充足させ,授業の活性化を図っていくための指導の在り方を追究しようとした。

 この実践によって,生徒には互いに級友を承認しようとする意識や授業での活動意欲が高まり,よりよい方向に二次欲求が満たされたことを研究成果として明らかにすることができた。

I 研究の趣旨

 人間は高度に発達した脳を持っており,そこから生まれるさまざまな欲求は行動の原動力となっている。それゆえ,その欲求がいったん満たされず,心の健康が脅かされはじまると,ストレスは溜り,悩みや問題が起こってくる。「集団不適応」や「不登校」などの要因の多くは,このところにあるようにも考えられる。

 大人は子供の欲求をどれだけ把握できるか。それは親や教師に問われるものであるが,もし,、子供の欲求と周りの反応とに食い違いがあれば,欲求は充足されず,子供は自分だけの世界に浸ってしまうようなこともありえる。また,否定され認められない子供は,怒りや不信感だけが増幅し,自信さえもなくしかねない。そこで,教師が行動の原動力となる子供の欲求エネルギーを的確に把握し,その欲求をどうすれば生かし,満たすことができるか,その指導の在り方について研究を進めてきた。

 今年度は,その第3年次にあたり,1・2年次での成果をもとに,教育相談的な考えを国語の授業の中で取り入れ,生徒の二次欲求を生かし,その欲求をよりよい方向へ充足させる授業の活性化に向けた指導の在り方を研究していく。

II 主題について

1 二次欲求とは

 二次欲求には,「社会的承認欲求,支配欲求,愛情欲求,自己顕示欲求,新しい経験への欲求,自己実現の欲求,自己表出欲求,所属の欲求,自尊の欲求,賞賛の欲求など」がある。これらの欲求は,人が成長していく過程の中で生じる欲求であり,人間関係に関する行動の原動力を指す。本研究では,これらの二次欲求のうち,下記に示す「自己表出欲求」「社会的承認欲求」を申心にして進める。

「社会的承認欲求」図の一部


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。