平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -136/156page
2 二次欲求を生かすとは
生徒たちは,自分に対してどれだけの認識をもつているであろうか。例えば,ドアを蹴り暴言を吐いた生徒がいたとする。なんらかのフラストレーションに耐えかねての行動であったとして,自分の欲求がなんであるかを必ずしも認識しているとはいえない。また,常日ごろ心を満たすプラスのストローク(働きかけ)が得られないと,それを歪んだ形で得ようとして,マイナスのストロークさえ求めることがある。これらは不満が爆発したり,不満が長く続いて心の歪みが表れた行動であるが,その裏を返せば,実は欲求の表れであるととらえることができる。
人間誰もが持つこの二次欲求は,人間らしく生きていくための原動力ともなる欲求である。このように欲求を人間にとって必要善なるものとしてとらえ,生徒に有する欲求を正しく見分け生かしていく方向で取り上げることである。
さらに,無気力状態の生徒でなくとも,自分の欲求が何であるか分からない生徒もいる。そうした生徒であっても不満は述べる。それもまた,欲求の表れと考え,生徒が自分の欲求を意識することも「生かす」ととらえることにする。
こうした考え方によって,「二次欲求を生かす」とは,教師が生徒の欲求に気づき気づかせ,それを大事に取り上げ,満たしてやることととらえる。
しかし,受け入れながらも欲求のすべてを満たすものではなく,時には欲求を押さえ,自制させることも勿論含むものでなければならないと考える。
3 よりよい方向へ充足させるとは
自己の欲求が満たされれば,まず惰緒が安定し,次に活力が増大し,自主的自発的な判断・思考に伴っての行動が表れる。生徒の個性は発揮され,自己実現に向かう状態となる。この状態がよりよい方向へ充足された姿であるととらえる。
人は人間関係の中で欲求が充足されてこそ自我は育つ。だからこそ,人間関係の中で認め励まして,充足させ,自我の在り方にも目を向けさせる。
4 教育相談的な指導とは
教育活動の全領域において,下記のような指導を日常のものとして,具体化していくことである。
(1) 子供一人一人が個性を持ち,異なる存在であるという見方に立って,子供の考えや感情に注目し子供が発したサインを読み取り,受け入れようとする。
(2) 子供と話し合い,聞くことに努め,子供の自己表現を助けるとともに,本人が自発的に伸びようとするのを援助する。