平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -138/156page
ていく。 学校生活を豊かにするためには望ましい人間関係を学級の中に形成し,教科指導の中で生徒一人一人の自己表出を一層促進していくことが求められる。
このように,教科の指導において二次欲求を満たし,生徒の活動をさらに活性化させていくことをねらいとする研究をすすめていくことにした。
2 実施計画
(1) 対象
中学校2年1組 男子17名 女子16名(2) 期間
平成6年10月より平成6年12月まで(3) 実践領域
国語科の授業を通してVI 研究の実践と考察
1 実践内容
(1) エンカウンターを用いる。
(生徒間の温かい人間関係をつくり,授業における生徒の意欲的な発表を促す)
(2) 生徒一人一人の気持ちや感憎を大切にする。
(生徒の発表したことや気持ちを受け止め,「明確化」して生徒に返すという方法で生徒を「認め」欲求を満たす)
二次欲求としては,承認欲求を満たすことを中心とするが,ただ単に励ましたり,褒めたり声をかけるだけでなく,認めるということについてもう一歩踏み込んで,生徒の側に立って生徒を見つめて,生徒の発言や生徒の気持ちを受け止め,明確化して生徒に返すという心からの認めを授業の中で行い,生徒の発言を生かす方法を実践する。 ・ 「心の中で,言いたいことが浮かんだようだね,それを言ってごらん」
・ 「ああそうか,こういうふうに考えたんだねこれはすばらしいなあ」
(3) 誤答も大事に受け止め,どんな意見にも耳を傾ける。
(自分の意見が取り上げられることによる主体性の発揮をねらう)
(4) ロールプレイングを効果的に授業の中に組み入れる。
(表現力,活動意欲の向上,クラスにおける人間関係の調整力を高める)
ロールプレイングによって,自然な姿で自己表出できるようにし,クラスをホットな状態にする。 T: 「鳥のイメージを話そう」
T: 「A君はどう」「Sさんはどうかな」
T: 「鳥になろう。それじゃA君,Sさん,Bさん,C君,D君,Eさん出ておいで」
(「鳥」の字を書いた大きなカードを置いて)
A男:「みんなきてみなよ」
(鳥たちが集まる)
C男:「おいこれなんだい」
B子:「こんな形見たことあるよ」
D男:「ぼくたちの姿みたい。この鳥,ぼくの足に似ている。ほらね」
S子:「目は空を見ているね。何考えているんだろう」
その後も楽しそうに語っていく。
2 二次欲求の把握
(1) 欲求把握のためのDATについて
この検査は,個人の潜在的な問題行動を発見し,診断するものであり,「適応傾向,性格傾向,規範逸脱傾向」の3っの面からとらえることができる。
ここで取り上げる「適応傾向」については,生徒が感じている家庭,学校,自分自身,対人関係での不満感を知るものである。不満のパーセンタイルが高いほど問題傾向が強いという見方ができると同時に,その生徒に潜在している欲求を実像として映し出すことができる。勿論,DATによって生徒の欲求の全てを把握したと断言するものではないが,生徒の内面の真実に迫るための重要な資料として教師自身がより日常的な生徒の欲求把握に活用できる。