平成6年度 研究紀要 Vol.24 個人研究 -144/156page
(教師) ・ 「そういえば,この学級はしっとりしてきた感じがする」と周りの先生方から言われた。
・生徒間では認められているという感じはあまり高まっていないが,ただ,おもしろいことに,相手を認めようとする気持ちの高まってきた生徒が多い。
(2) DATの事前,事後調査の全体比較
図12
TK式DAT診断表
この図は,学級全体の平均値を事前と事後で表したものである。どの適応項目も事後では危険性が小さくなり,欲求が満たされてきたことがうかがえる。とくに学校不適応の項目での変化が大きく表れた。学校での生活が満たされ豊になることは,家庭での不満などの軽減にも役立っているかに思われる。
3 研究のまとめ
生徒一人一人や学級全体に変容がみられたのは,二次欲求が満たされてきたことの表れと考えられる。授業が生徒にとっておもしろいものに変わり,生徒の学習に対する関心,意欲が高まって授業の活性化を生んだことは,教育相談的な指導の効果と考えられる。
以下,本年度の実践を通して明らかにできたことを示し,まとめとしたい。
(1) 活動の一っ一っを受け止め,「明確化」しながら,「認め」「賞賛」する教育相談的な指導によって生徒へかかわっていけば,生徒は生き生きと学習に取り組み,教師と共に充実した学習体験を積むことができる。
(2) 教育相談的な考えに立って指導を実践すると「先生が怒らなくなった」「おもしろいことを言ったりする」「先生も笑った」というように教師自身が変わり,生徒の側に立った楽しい授業を構想するようになる。
また,生徒には級友を承認しようとする意識が生まれ,社会的承認欲求の満たされた生徒も出ており望ましい学級集団への発展が期待できる。
(3) 生徒の持つ二次欲求を教師が適切にとらえ,生かす指導を行えば,生徒のものの見方を望ましいいものに育て,次への行動意欲を生み出すことになる。
(4) 自己表出欲求を生かし促すのは教師と生徒及び生徒相互の人間関係が基盤んとなる。この環境を醸成する方法としてエンカウンター,ロ一ルプレイングは極めて有効と考えられる。
4 今後の課題
(1) 生徒にとって,学校生活がより豊かなものになるには,教育相談的な指導の日常化を一層進展工夫する必要がある。
(2) 一教師の実践から教師集団に広げ,共に協力体制を図り指導の在り方を追究することが望まれる。
参考文献
無意識の構造 中央公論杜
グループ・エンカウンターを中心に 歴々杜
「月刊学校教育相談 1992年10増刊」学事出版