研究紀要第108号 「一人一人のよさや違いを認め合う学級の人間関係づくりに関する研究」 -049/175page

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そこで,本研究で目指す学級の人間関係を,次のように考えた。

他者とのかかわりの中で,級友からの働きかけにより,自分を客観的にとらえ,ありのままに受け入れて,その中からよさに気づく,この3つを繰り返しながら自己理解が深まっていく。また,自己理解が深まってくると,他者への関心が出て,ありのままに受け入れ,その中からよさに気づくようになり,他者理解が深まって,他者への働きかけを行うようになる。これを図示したものが,(資料1)である。

これらの過程を繰り返しながら,自分や他者のいろいろなよさに気づくことができるような指導援助を継続していくことにより,その結果として,よさの中から自分との違いに気づくようになってくると考えた。

2 対象児童生徒のグルーピング

児童生徒は,自己の望ましい姿を目指して成長しようとする存在である。その児童生徒が集団生活の中で自らのよさを発見し,高めていくためには,学級という集団との調和を図り,個性や能力を生き生きと発揮できる状態になっていなければならない。

本研究では,学級の児童生徒全員を(資料2)のような基準で適応・順応・不適応の3つにグルーピングした。この中の,自己の明確な考えをもたずに級友への働きかけが弱い《順応》の児童生徒が,自信をもって級友へ働きかけるようになれば,適応や不適応の児童生徒もよりよい人間関係づくりを目指すと考え,日ごろ,なかなか教師の目が届かないと言われる 《順応》の児童生徒を中心に指導援助を展開することにした。

なお,適応,順応,不適応児童生徒の判定については,学級生活に関するアンケートの結果と日ごろの担任の児童生徒観察を加味して,担任と協議して決定した。

(資料2)グルーピングの基準
適 応 学級との調和を図り,個性や能力を生き生きと発揮できる状態を求め,自分を学級に合わせようとしたり,自分合うように学級そのものに働きかけようとする。つまり個と環境の調整操作がうまくできている状態。
順 応 一見すると学級と適応が図られているように見えるが,自己の明確な考えを持たずに,ただ学級に同調している状態。
不適応 個と環境の調整操作がうまくいかず個人と学級の間に不調和が生じ,何らかの緊張や葛藤が生まれて,様々な問題行動が発生しやすい状態。

3 本研究で目指す児童生徒の姿

上記の指導援助の基本的考えを踏まえ,本研究で目指す児童生徒の姿を以下のようにとらえ,研究を進めることにする。

《本研究で目指す児童生徒の姿》
【小学校】
1. 学級の友達とのかかわりを通して,自分や級友を理解しようとする児童。
2. 身近な集団の中で,自分の役割に気づき個性を発揮して活動しようとする児童。
【中学校】
1. 級友とのかかわりを通して,自己理解や他者理解を深めようとする生徒。
2. 様々な集団の中で,自己の役割をとらえ個性を生かして活動しようとする生徒。

4 研究の見通し

学級生活の場において,構成的グループ・エンカウンターなどを通して・児童生徒一人一人が,学級内の人間関係の拡大・改善を図るとともに,互いのよさや違いを認め合える指導援助をしていけば・本研究で目指す児童生徒の姿に近づくであろう。

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