研究紀要第108号 「一人一人のよさや違いを認め合う学級の人間関係づくりに関する研究」 -052/175page
この表から,順応の児童生徒の割合をみると,小・中学校ともに30%台になっており,少なくとも3〜4名に一人が順応児童生徒に該当している。
順応の中から抽出した児童生徒と,その属する学級の実態は,次のとおりであった。なお,小学校4年Q組については,本年度だけの協力依頼のため,学級の変容だけをみることにした。
(1) A子(小学校4年P組)
3年生の時のA子は,みんなと楽しく取り組むという姿があまり見られず,ややもするとさめた目で友達を見ているところがあった。演習の中で友達から自分のよいところを認めてもらうことで,A子も周囲の友達に目を向けられるようになってきた。
4年生になってからは,学習への取り組みが意欲的になり,生活班のメンバーから,頼りにされるようになってきた。しかし,友達の考えを受け入れられないことがあるため,休み時間など特定の友達と活動することが多い。
A子の学級は,明るく活発な学級であり,昨年度の実践を通して昼休みなどに男女で一緒に遊ぶ姿が多く見られるようになってきた。しかし,授業中や話し合い活動では,友達同士で遠慮しているためか,自分の考えを素直に表現できない児童も多く,順応の児童の大半がそうである。
(2) 小学校4年Q組
男女それぞれにリーダー的な児童がいて,全体を引っ張っていく傾向がみられる。休み時間などは,リーダー的児童を中心に元気に外遊びする児童が多い。反面,話し合い活動では,ややもすると発言する児童が決まってしまい,学級全体で話し合うという雰囲気に欠ける時がある。
(3) B男(中学校2年R組)
1年生の時のB男は,気軽に話のできる者が小学校時代からの2,3人に限られており,他の級友についての関心もあまりなかった。その後,演習を重ねるごとに,日ごろあまり会話のない生徒に目が向くようになり,級友への関心が高まってきた。
2年生になってからは,クラス替えにより一時緊張する面がみられたが,徐々に自分の思いを出せるようになってきている。しかし,自分から積極的に働きかけることは,あまりみられない。
また,小グループでの活動においても,自分の意見を積極的に述べることははとんどなく,周囲が決めたことを黙々と実行するタイプである。
B男の学級は,明るく活気のある学級で,それぞれの考えや意見を出しやすい雰囲気であるが,順応の生徒は今一歩のところで尻込みしてしまい,それぞれの自分を出し切っていない。
(4) C男(中学校2年S組)
1年生の時のC男は,明るくふるまっていたが,周りに合わせようとしている面が多くみられた。演習等の指導援助により,徐々にその殻がとれてきたように感じられた。
2年生になってからは,部活動が一緒の級友との行動が多くなり,活発になってきた。しかし,一見すると自分から周りの生徒に積極的に言葉かけをしているように見えるが,まだ本当の自分の考えや思いを出すまでには至っていない。また,周囲の生徒を過剰なまでに意識して,受けをねらった発言も多くみられる。
C男の学級は物静かで,何か行動をしようとするときに周りの出方をうかがったり,傍観的になったりする場面が多くみられる。