研究紀要第108号 「一人一人のよさや違いを認め合う学級の人間関係づくりに関する研究」 -055/175page
2. 構成的グループ・エンカウンターの実践例
構成的グループ・エンカウンターの実践例として,最後に実施した「立場かわれば」を紹介する。
工夫した点を事前,演習中,事後の各段階に分けてまとめてみる。
ア 事前の段階
○ 演習で使用するシナリオについては,立場による感じ方の違いが実感できるように,登場人物の立場の違いがはっきりしたものを作成した。
内容としては,児童が日常生活で経験しているようなものと,アニメの登場人物によるものの2つにした。(資料7)
イ 演習中
○ 演習グループごとの話し合いでは,「登場人物はどんな気持ちだったか」ではなく,「登場人物を演じてみて,自分がどんな気持ちになったか」について考えさせる。
○ 順応の児童に対しては,次のような働きかけを実施した。
・演習中の児童の活動のよいところやつぶやきなどを認めて声をかけることで,自信をもって活動できるようにした。
・意図的に指名し,発表の機会を増やすとともに,考えを友達に知らせる場を設定する。
(資料7)『立場かわれば』のシナリオ(小学校4年生) シナリオ1 場所:子ども部屋 登場人物:お母さん,兄(たろう),弟(じろう) ※ たろうとじろうが,子ども部屋でファミコンをやっている。そこに,お母さんがやってきました。 お母さん 「だれか,お使いに行ってきてくれる?」 た ろ う 「じろう,おまえ行ってこいよ」 じ ろ う 「えーっ,ぼくだってファミコンやりたいよ」 お母さん 「たろう,お兄ちゃんなんだから行ってきてよ」 じ ろ う 「ほら,お母さんは,おにいちゃんが行けといってるよ」 た ろ う 「なにー,弟のくせに,おれのいうことがきけないのか!」 お母さん 「兄弟げんかしてないで,だれか行ってきてよ」 じ ろ う 「お母さん,じゃ,ぼくが行ってくるよ」 お母さん 「そう,悪いわね。ありがとう」 シナリオ2 場所:公園 登場人物:ジャイアン,スネオ,ノビタ ※ 公園でノビタがまんがを読んでいます。そこに,ジャイアンとスネオがやってきました。 ジャイアン 「ノビタ,そのまんが,かしてくれよ」 ノ ビ タ 「えーっ,ぼく,まだ読んでないいんだよ」 ス ネ オ 「なにー,ノビタのくせになまいきだぞ」 ジャイアン 「早くかせよ,かさないいとぶんなぐるぞ!」 ス ネ オ 「そうだ,そうだ。ジャイアン,とりあげようよ」 ノ ビ タ 「そんなぁー,あんまりだよ」 ジャイアン 「うるさい!この本はおれさまのものだ」 ノ ビ タ 「ドラエモーン,たすけてよー!」 演習中のA子への担任のかかわりは,次のようであった。
[ウォーミングアップの場面で]
《A子が自信をもって活動できるようにするために》
ミラーリングの時,相手がまねしやすいように行っていたので,「友達のことを考えて動いているね」と声をかけ,よいところを認めた。