研究紀要第108号 「一人一人のよさや違いを認め合う学級の人間関係づくりに関する研究」 -058/175page

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 2. 構成的グループ・エンカウンターの実践例

 ここでは,4回目に実施した「立場かわれば」の様子を各段階ごとに紹介する。

《ウォーミングアップの段階》

 最初に演習のねらいを説明した後,ウォーミングアップを実施した。

2人一組になって互いに向き合い,一人は立ち,もう一人は座って見つめ合う。役を変えて再度行い,2つの立場で感じたことを話し合う。

《演習内容の説明の段階》

演習内容の説明をした後,事前に作っておくシナリオが完成していない生徒を確認し,少し時間を取って全員がシナリオを完成させるようにした。

その後,関連ある内容(例えば教科,野球チーム,ドラエモンなど)のカードを持っている生徒同士が集まる『仲間を探せ』というゲームを通して,演習のためのグループ(4人)をつくった。

《演習の段階》

各グループごとに,グループ内の一人のシナリオを選び,配役を決めてそのシナリオを再現した。

役になりきって演じているグループを一つ選び,全体の場で実演させ,生徒の関心を高めさせた。

再度配役を変えて,順次繰り返した。ここでは,恥ずかしがらないで,できるだけ役になりきることを助言した。

演習が終わってから,グループ内で「役を演じた気持ち」について話し合った。その時の担任と生徒とのやりとりは,次のようなものであった。下のTは教師,Sは生徒(C男はそのまま)を表している。

T:みんな役になりきって演じているので,先生は大変感心しました。野球チームのグループは,どんなシナリオでしたか。
S1:先生が生徒に注意をしている場面なんですが,生徒の方はあまり反省していない場面です。
T:C男君は,どんな役をやったのかな。
C:関係ないので,逃げていく生徒の役をやりました。
T:やってみてどんな気持ちがしましたか?
C:「ごめんなさい」とは言っているんですが反省の気持ちは全くありませんでした。
T:反省の気持ちがない,なるほどね。ところで,先生役をやった時はどうでしたか。
S2:ぼくは,おもいっきり怒ったので,スカッとしました。
S3:私は,怒っている時には,いい気分ではありませんでした。生徒役の人が,話を聞いていないのが伝わってきて・・・。怒られていやだろうなんて考えたりして・・・。
T:そう,人によって感じ方が違うのかな。
C:先生役をやった時,ぼくもS2君と同じように感じたんだけど,S3さんの発表を聞いてその気持ちがわかるような気がします。そんなふうにも考えられるんだ。
T:なるはどね・・・。

《振り返りの段階》

演習を通して感じたことを発表させながら,演習の振り返りを行った。発表された主な感想は,次のようなものだった。

○ いろいろな立場に立っことによって,相手の気持ちがわかるようになった。

○ 同じ役をやっても,人によって感じ方が違うことに気づいた。

○ C君の発表したことが,よくわかるような気がした。

○ 後輩役をやって,いい感じがしなかった。後輩と話す時には,気をつけなければいけないと思った。

(3) 小集団による話し合いの実践例

ここでは,『立場かわれば』の後で実施した小集団による話し合いの実践を紹介する。工夫した点を,事前・話し合い中・事後の各段階に分けてまとめて


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