研究紀要第108号 「一人一人のよさや違いを認め合う学級の人間関係づくりに関する研究」 -062/175page
3. 日常の生活から
A子はこれまで,自分の価値観で友達の発言や行動を非難してしまうことが多かっ。しかし,今回の演習を通して,友達のよいところを肯定的な見方で判断できるようになってきた。また,音楽の学習では,班ごとの合奏練習の時に,リーダーとして友達の意見を聞きながらまとめることができるようになってきた。
(2) B男(中学校2年生)
1. 構成的グループ・エンカウンターを通して
各回とも,ねらいを踏まえて楽しそうな表情で,一生懸命に取り組んでいた。
演習中の発言の内容では,1回目では一般的な感想を述べていたのに対して,3回目の『目かくしジョギング』では「相手の人が信頼できたので,目が見えなくとも安心して移動できた」と自分が感じたままに適応の生徒に伝え,全体の場でも発表することができた。
また,振り返り用紙の『印象に残った友達』の欄では,3回目,4回目とも2名の生徒が,「わかりやすく誘導していた」「役になりきろうと努力していた」「発表した内容がすばらしく,その気持ちがよくわかった」などの理由でB男を挙げていた。
これらのことから,B男は,ありのままの自分を周りの者から受け入れてもらえたという体験を通して,自分自身を肯定的に見ることができるようになり,自分から周りへ働きかけるようになってきた。その結果,B男と級友との心理的な距離が縮まり,学級内の人間関係が改善され,互いのよさに目を向けようとしている様子がうかがえる。
2. 学級生活に関するアンケートから
このアンケートの事前と事後を比較すると,(資料13)の表のようにプラスの変容をしていることがわかる。6.,10.の変容から,友達に依存する傾向が少なくなったこと,友達のよさを認めて受け入れようとしている様子がうかがえる。
また,自由記述欄の記載内容も,(資料14)からわかるように事後のものは膨らんできており,それだけ学級への思いが増し,関心が高まってきていることがわかる。
(資料13)学級生活に関するアンケートの比較 1.〜5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 事前 2.4 2 2 2 2 2 3 事後 3.0 3 2 2 2 3 3 ※ 1.〜11.の調査項目については,P.51の資料3を参照のこと
3. 日常の生活から
学級の係活動のリーダーとして意欲的な取り組みがみられるようになり,みんなの前で自分らしさを出すことができるようになってきた。また,話し合いの場面では,級友の発言を大切にしながらも,自分から建設的な意見を述べることが多くなってきた。
(3) C男(中学校2年S組)
1. 構成的グループ・エンカウンターを通して
1回目の演習では,楽しそうに参加していたが,受けをねらった発言が多く,ほとんど分を出していなかった。
しかし,回を重ねるにつれて,小グループでは自分の考えを出すようになり,意欲的になってきた。C男の動きによって,周りの適応の生徒も活発に活動するようになってきた。