研究紀要第108号 「一人一人のよさや違いを認め合う学級の人間関係づくりに関する研究」 -063/175page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 2. 小集団での話し合いを通して

 小集団にもかかわらず,友達を意識した言動がみられたが,回が進むにつれて「○○君が自分のことを△△と言うのは意外だった」などと,自分の思いを表現するようになってきた。

また,「○○さんは,本当の気持ちを素直に表現できてすばらしい」などと,友達のよいところにも目を向けて,それを認めることができるようになってきた。

これらのことは,演習や小集団の話し合いで,級友に受け入れられた体験を通して,自分に対して自信を持つようになったためと考えられる。

 3. 学級生活に関するアンケートから

 このアンケートの事前と事後を比較すると,(資料15)の表のように全般的によい方向に変容しており,本研究でねらいとした8.,9.,10.でプラスの変容がみられた。

(資料15)学級生活に関するアンケートの比較
1.〜5. 6. 7. 8. 9. 10. 11.
事前 2.2 3 2 2 2 2 3
事後 2.8 3 2 3 3 3 3

また,自由記述欄の記載内容は,事前の調査では「ない」と記載してものが,事後では(資料16)のようになり,学級への関心が高まってきていることとともに,本音が出せるようになってきた様子がうかがえる。

(資料16)事後アンケートの「学級への願い」
(資料16)事後アンケートの「学級への願い」

 4. 日常の生活から

 本来の素直さを取り戻し,少しずつではあるが自分の本音を表現するようになってきた。また,級友の意見や行動を受け入れ,それを参考にしながら生活しようとする姿が見られるようになってきた。

(4) その他の順応児童生徒

抽出した3名以外の順応児童生徒の変容は,次のとおりである。

小・中学校ともに,演習の中で活躍する場面を多く設定して指導援助にあたった結果,自分の考えをはっきりと述べるようになり,積極性も出てきた。さらに,小集団の話し合いの中では,自分から意見や考えを発表する児童生徒がみられるようになってきた。この影響を受けて,適応の児童生徒もより積極的に発言・行動するようになってきた。

また,不適応の児童生徒も周りからの働きかけにより,友達と一緒に行動することが多くなってきた。

2 学級全体の変容

(1) A子の学級(小学校4年P組)

 1. 小集団での話し合いを通して

 児童は,構成的グループ・エンカウンターの演習を通して,本音で話しても受け入れてもらえることを実感した。そのため,小集団での話し合いでも日ごろの友達とのことやスポーツ少年団でのことなど,教師や友達が知らない姿を話すようになってきた。さらに,互いに新たな一面を知り,友達への関心も高まってきた。

 2. 学級生活に関する実態調査から(教師の観察による)

 教師の観察によるアンケートの事前と事後を比較すると,全般的によい方向に変容しており,1.,2.,9.,11.の項目で大きな変容がみられた。(資料17)また,本年度のねらいに関連した10.の項目でもプラスの変容がみられた。

この結果から,児童は自分の考えを話せるようになり,休んでいる友達のことも心配するようになってきていることがわかる。また,学級全体が友達の考えのよいところや,自分と違う考えでも受け入れ,認め合うようになってきて,児童一人一人が自分らしさを発揮しながら積極的に取り組もうとしている様子がうかがえる。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。