平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -075/175page
他の多くの児童にも見られた。
3 ディベート学習における具体的な配慮事項
(1)アフターディベートの重要性
ディベート学習は,テーマに対する見方・考え方の「勝敗」がついた時点で終わってはならない。なぜなら,その決着が,事象に対する正しい判定であるとは限らないからである。例えば,【授業1】の実践では,7対6で「国連は世界平和に役立っていない」という判定が下された。これは,ある一面から見ればそう言うこともできるのであって,別な側面から見れば反対のことも言える。実際の授業では,児童にディベート・マッチ終了後の一人一人の考えを聞いてみた。その結果,「この判定は正しくない」という意見も出されたので,教師もそれを認め,「実際はどうなのだろうね」と疑問を投げかける形で授業を終えた。
このように,ディベート・マッチが終わったら,テーマに対してもう一度深く考え合う時間として,フリートーキングや感想文,あるいは,立場を変えてのディベート・マッチなどを設定して,事象に対する見方・考え方には幅があることを再確認させるようにすることが大切である。
(2)教師のかかわり方
ディベート学習で,児童が一番楽しみにしているのはディベート・マッチであろう。そこで,教師はディベート・マッチの最中はあまり口出しをしないほうが良いと考える。結果がどう出ようと,アフターディベートをしっかり行えば,児童が誤った認識を持つということは避けられる。
ディベート学習は,「課題設定(テーマ設定とチーム編成)」,「課題追究(リサーチ活動と立論)」,「課題の検証(ディベート・マッチ)」,「まとめ(アフターディベート)」という段階に分けれられる。教師と児童のかかわりが重要になってくるのは,「課題追究」の段階であると考える。なぜなら,この活動の充実が,後のディベート・マッチを成功させる鍵となるからである。具体的には,次のようなかかわり方がある。
1. グループで役割分担をする場面
ここでは,テーマに対する自分たちの考えが話し合われ,それを証明するための観点が決められる。この観点について,教師は,その過不足についてアドバイスをするようになる。そうしないと,相手との議論が噛み合わなくなるばかりか,学習の方向性が的外れなものになってしまう恐れがある。
2. 観点にそって一人調べをする場面
ここでは,自分の役割分担にそって,児童一人一人が様々な資料を調べる。教師は,資料を捜せないでいる児童には,資料のある場所や資料を集める方法など,資料を捜すヒントを与えるようにしなければならない。具体的には「図書室へ言ってごらん」とか,「電話で聞いてみたら」といった支援が考えられる。また,資料の丸写しをしている児童には,「これはどんな意味」という発問をし,自分の言葉で説明できるよう支援することが大切である。そうすることによって,ディベート・マッチでの質問にも答えられるようになる。
3. 資料をもとにチームの立論をする場面
ここでは,持ち寄った資料をもとに,自分たちの論を組み立てる話し合いが行われる。教師は,相手側が行いそうな質問をし,論の弱点などに気づかせるようにする。また,ふだん話し合い活動の苦手な児童の集めた資料なども活用できるようアドバイスし,個々の児童の存在感を高めるなどの配慮をすることも大切になってくる。
以上のようなかかわりを持つことによって,単元でねらう学力を,個々の児童に身に付けさせられると考える。
(3)時間設定の工夫
先に,「ディベート・マッチの流れ」として,2つの授業で行った時間を示した。
・ 立論 5分 ・ 作戦タイム1 5分
・ 論戦 15〜20分
・ 作戦タイム2 2分 ・ 結論 3分
で行ったが,立論5分ではどちらも長すぎた。3分