平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -076/175page

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もあれば十分であった。逆に,論戦は,20分でも短かった。児童の実態に合わせ,この時間設定も柔軟に取り扱っていくようにする必要がある。ただ,ディベート・マッチはゲームであるので,活動が始まってからの時間変更は避けたい。そのためにも,あらかじめ時間の設定に関しては,十分検討しておく必要がある。

(4)児童の議論への意識

ディベート学習では,児童が議論し合うので,その後の人間関係が崩れたりしないだろうか。このことに関し,県内の児童256名へのアンケート調査を行った。結果は,次のようになった。

「議論をし合うのは好きですか」

4年生 5年生 6年生
とても好き・・・・・・・・・・ 27%  9% 15%
すこし好き・・・・・・・・・・ 30% 32% 25%
あまり好きでない・・・・ 31% 50% 45%
好きでない・・・・・・・・・・ 12%  9% 15%

「意見を言い合うと仲が悪くなると思いますか」

4年生 5年生 6年生
とても思う・・・・・・・・・・  4%  0%  2%
すこし思う・・・・・・・・・・  5%  6% 12%
あまり思うわない・・・・ 24% 32% 14%
思わない・・・・・・・・・・・・ 67% 62% 72%

この結果から,児童は,議論することに対しそれ程否定的でないことがわかる。ディベート学習は,十分な人間関係への配慮を行って行えば,児童にとってとても楽しく学習ができる指導方法であると考える。

IV 研究の成果と課題

1 成 果

(1)小学校の高学年においては,テーマに対する立場を機械的に決めたり,勝敗をつけたりする普通のゲーム形式のディベートができ,それによってより広いものの見方や考え方ができるようになることが分かった。

(2)ディベートを行う際,テーマ設定をしっかり行えば,児童の活動は,教師の考える望ましい方向へ向かい,より実際的な知識が身に付くことが分かった。

(3)しっかりした学級経営が行われていれば,児童は「議論」をすることに対し抵抗感はなく,また,議論の後でも友達との人間関係を損なうとは考えていないことが明らかになった。

2 課 題

(1)時間のかかる学習方法なので,取り入れられる単元が限られてくる。

(2)単元を通して学習するためのテーマ設定が難しい。

(3)児童には個人差があるので,ディベート学習の様々な活動の中でどのように個人の「よさ」を生かしていけばよいか,さらに研究を深める必要がある。

最後に,本研究を進めるにあたり,ご協力いただきました,滝根町立菅谷小学校の柳沼照栄前校長先生,古殿町立田口小学校の田子育良校長先生,同小学校の河野英明先生に厚く感謝申し上げます。

【参考文献】

・「小学校学習指導要領」 文部省 1989年
・高野尚好「改訂小学校教育課程講座社会」 ぎょうせい 1989年
・赤塚公生・阿部正春「ディベート学習の現状と課題」 福島県教育センター 1994年
・岡本明人「授業ディベート入門」 明治図書 1990年
・川本信幹・藤森裕治「教室ディベートハンドブック」 東京法令出版 1993年
・松本道弘「やさしいディベート入門」 中経出版 1990年
・藤岡信勝「議論の文化を育てる教室ディベート入門事例集」 学事出版 1994年
・佐久間順子「シリースす 小学生でもできる教室ディベート」 学事出版 1994年

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