平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -077/175page

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児童が意欲的に思考活動する理科の学習

長期研究員  土 井 昭一郎

研究の要旨
新しい学力観に立った学力の育成では,情意面と認知面の連動する関係を重視した学習指導を進めることが重要視されている。理科の学習では,児童一人一人が主体的に問題解決する意欲的な学習活動を積極的に経験させることが求められているが,実際の指導では観察・実験には意欲的に取り組むが,「なぜ,そうなるのか」などの思考活動になると意欲が高まらず,持続しない傾向がある。
そこで本研究は,情意面と認知面のかかわりを重視し,学習意欲を高め持続させるような支援を継続することによっで情意面を活性化し,自分の考えに自信を持たせるとともに,理科の学習で科学的な思考を事象認識の段階からとらえ,指導過程を明確にした。このような授業を展開していくことによって,児童の知識・理解を確かなものにすることをねらいとして授業実践した結果,次のことが明らかになった。
1. 児童の支援要求傾向の高い項目や自ら考える場を指導過程に位置付け支援することによって,児童の情意面を活性化することができた。
2. 個別指導のための「自分の考えを深めるカード」に朱記による支援を継続したことによって,教師と 児童の信頼関係が深まるとともに,自分の考えに自信を持たせることができた。
3. 科学的な思考を事象認識の段階という視点からとらえたことで,思考活動を活発にするための指導過程が明確になり,進んで考えさせることができた。
4. 情意面を活性化させることによって,意欲的に思考活動するようになり,知識・理解を児童が自ら獲得することができた。

I 研究の趣旨

理科の目標では,「直接経験の重視」「問題解決能力の育成」「科学的な見方や考え方」の3点が重視されている。このことば,児童が自ら経験したり学んだりしたことを生かしながら新しい問題を見出し,考え,表現し,行動する資質や能力を主体的な追究活動によって育成することの重要性を求めている。なかでも,児童一人一人が主体的に問題を解決する意欲的な学習活動を積極的に経験させることが求められているが,実際の指導では観察・実験には意欲的に取り組むが,「なぜ,そうなるのか」などの思考活動になると意欲が高まらず,持続しない傾向にある。

このことについて北尾氏は,「主体性とは,自らの考えに基づく判断や行動を指すものであるが,ここでの自らの考えをつくる能力は教育を通して獲得されるものである。幼いころから,自ら考えなければならない場を数多く経験することによって育つ能力であると同時に,指導法にも依存する。」 注1) と述べている。

そこで本研究は,情意面と認知面のかかわりを重視し,学習意欲を高め持続するような支援を継続することによっで情意面を活性化し,自分の考えに自信を持たせるとともに,理科の学習で科学的な思考を事象の認識段階からとらえ,指導過程を明確にした。このような授業を展開することによって,児童の知識・理解を確かなものにすることをねらいとして授業実践を行った。

II 研究のねらい


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