平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -078/175page
児童の学習意欲を高め,持続させるような支援や事象認識の段階という視点からとらえた科学的思考を指導過程に位置付けた授業が基礎学力の向上にどのように有効であるかどうかを追究する。
III 研究の内容と方法
1 研究の内容と方法
(1)研究主題や科学的な思考に関する文献,先行研究を調査・分析する。
(2)支援要求傾向を調査し,支援内容を指導過程に位置付ける。
(3)理科の学習で科学的な思考を事象認識の段階という視点からとらえ,指導過程に位置付ける。
(4)自己評価を活用し,関心,意欲と思考にかかわる情意面の関係を分析する。
(5)個別指導のための「自分の考えを深めるカード」への朱記による支援を継続することで,自分の考えに自信を持たせる。
(6)思考にかかわるテスト問題を作成,実施し,情意面との関係について,結果を分析する。
2 研究の対象
耶麻郡塩川町立塩川小学校5年2組(33名)の同一学級を研究対象とし,継続研究する。
IV 研究に関する基本的な考え方
1 基礎学力のとらえ方
ここでいう基礎学力とは,福島県教育庁義務教育課発行の「基礎学力向上の手引き」を参考に,「児童が獲得した基礎的・基本的な知識・理解や技能であり,それらをその後の学習の中で活用し得る力」 注2) ととらえて研究を進めた。
2 情意面の活性化とは
基礎的・基本的内容を「子供たちが主体的に学習していくために必要となる資質や能力」ととらえるとき「関心・意欲・態度」「思考力,判断力,表現力」「知識・理解,技能」などの資質や能力がその中核になる。ここでは,児童が主体的な学習を展開するためのエネルギーとなる「関心・意欲・態度」を情意面ととらえ,それらを高め持続させることを活性化ととらえた。「態度」は,長期間に育成されるものと考え,本研究の対象から除いた。
3 支援要求傾向のとらえ方
児童の情意面を活性化する指導を行うとき,教師の支援にどのような思いや願いをもっているかを明らかにし,授業を工夫・改善していく必要がある。そこで,児童の「〜を手伝ってはしい」などの思いや願いを「支援要求傾向」としてとらえた。(79ページ図2参照)
4 思考のとらえ方
本研究では科学的思考に焦点を当て,思考を事象認識の段階という視点からとらえた。認識の各段階の思考の内容を,次のようにとらえた。
(1)事実関係をつかむ
具体的な事象を数多く見つけて比較し,共通点や差異点を見出すこと。
(2)相互関係をつかむ
事象の条件とのかかわりで考え,事象の起こる条件から変化の要因をとらえること。
(3)因果関係をつかむ
分析的に考え,事象の起こる要因,量的変化や時間的変化の規則性をとらえること。
(4)総合関係をつかむ
事象と事象の相互関係や規則性を総合的に考えること。
5 思考にかかわるテスト問題
学習指導要領や単元の観点別学習状況の評価規準をもとに,授業実践する単元「もののとけかた」の科学的な思考についての問題を思考の事象の認識段階にそって作成し,単元の事前と事後に行った。また,テストの診断にS−P表を活用した。
さらに単元の学習をもとに児童の創造性を豊かに