平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -097/175page
「保健の授業」に関する意識調査における教師と生徒の期待値分析
−生徒と教師を対象としたアンケートを通して−長期研究員 千 葉 眞佐春
研究の趣旨 社会構造の著しい変化にともなう国民の疾病傾向や健康問題はますます多様化や複雑化の様相を呈している。また,健康に関する情報が生活の至るところに氾濫し,その結果,期待に反して混乱を招いている状況もみられる。このような背景における健康教育は,まさに生涯教育の観点から捉える必要があるものである。しかし,生涯教育の1ステージとうたわれている今日の学校における健康教育は,その使命を十分には果たしていないように思われる。 そこで本研究では,保健体育科教師と,既に「保健の授業」を履修している高校3年生と大学1年生を対象にアンケートを行い,それらの回答をもとに高等学校における「保健の授業」の現状を探ってみた。 その結果次のようなことが明らかになった。 (1)教師,高校生,大学生それぞれの視点から「保健の授業」に対して高い期待観を持っている。 (2)高校生,大学生の「保健の授業」に関する「好き嫌い」は二分化する傾向にある。 (3)「保健の授業」に関して,教師は「社会で生きる力」を心がけながら進めているが,高校生,大学生は「知識の羅列」と捉える傾向がみられた。 (4)「保健の授業」に関する「楽しさ」に対する期待値は,教師(63.2%),大学生(51.5%),高校生(35.0%)であり高校生の期待値は相対的に低い。 (5)高校生,大学生の考える「楽しい保健の授業」は「具体的で身近な教材を使用し,グループで調査・活動し,話し合いで意見が言え,気楽に質問のできる分かりやすい授業」である。 (6)高校生・大学生共に「応急処置」に関する授業に対しての期待値が大きい。 I 研究の趣旨
これまでの保健の授業は,教科書が教材の中心で教師によりあらかじめ準備された健康についての知識,技術,そして見方や考え方などを「講義形式」の授業法で生徒へ「伝達」するという一方的なものとして捉えがちであった。
しかしこれからは生涯教育の1ステージとして新しい学力観に立って「保健の授業」を捉え, 教える ことを重視した健康 教育 から,自ら 学ぶ ことを重視した健康学習への転換が必要である。
そこで本研究においては,このような健康教育から健康学習への転換期にある「保健の授業」に関する教師と生徒の期待を意識調査によって探り,授業において,どのような工夫や展開が必要なのかを明らかにするとともに,今後の「保健の授業」改善の基礎としたい。
II 研究計画・方法
1 保健の授業に関するアンケートの検討 平成7年12月〜 2 県内公立高等学校保健体育科教師へのアンケートの実施 平成8年1月 3 県内大学におけるアンケートの実施 平成8年11月 4 県内公立高等学校3年生へのアンケートの実施 平成8年12月 5 アンケートの分析・検討 平成8年12月〜平成9年1月