平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -106/175page
での活動」をあげているものが多い。
また,「保健の授業」が好きな高校生がその具体的な例としてあげているものは,実験・実習等「活動する」ことや,「身近な教材」を使用することなどである。
一方,大学生は「具体物の提示」を「楽しい授業」の条件にあげているが,「保健の授業」が嫌いな学生は「分かりやすさ」や「笑いのある」授業等も「楽しい授業」に必要な条件としてあげている。
「楽しい授業」としてあげられた「グループでの学習」については,ほとんどの高校生や大学生は,「保健の授業」では経験がないようであるが,他教科での学習経験体育科教育 驚異の小宇宙からあげているものと思う。このことは,教師が「授業中に使用する教材の割合」についての回答で,「教科書」が多くを占めていることからもうかがえる。ただ,教材については「(6)教材研究に使用する専門書・雑誌」であげたように,広範囲な書籍類により各々の教師が情報の収集を心がけ教材研究に努めていることは十分評価できることである。
ただ,グループで学習活動を行う際に,単にグループに分けて課題追究をさせるだけでなく,グループで活動する良さや必要性について教師が認識し,それらを生徒に学習させる必要がある。
以上から高校生や大学生が考える「楽しい授業」をまとめてみると,「具体的で身近な教材を使用し,グループで調査・活動し,話し合いで意見が言え,気楽に質問のできる分かりやすい授業」と考えることができる。
「保健の授業」の実際的な活用例としては,高校生や大学生のほぼ半数が「応急処置」で「授業で習ったことが日常役立っている」と答えている。
この「応急処置」については「もっと勉強したかった分野」でも回答が多く,生徒にとって非常に興味深い学習内容の一つであるように思われる。特に部活動等での活用例が回答の中にみられた。
「印象に残った保健授業」としてあげられたものの中に「ビデオ」を活用した授業が多く,その活用内容は教師が授業で使用する「ビデオ」の内容と一致していた。
このことは,学習における「ビデオ」の活用が生徒が自ら学ぶきっかけの一つとなっていることを示すものと言えよう。
また,実験や実習も印象に残る授業としてあげられており体験する授業の大切さを示唆している。
V 今後の課題
今回の調査の中で「楽しい授業」の条件の一つとしてあげられた「身近で具体的な」教材について開発をすすめ実践授業や検証授業を通して追究していきたい。
また,「グループ学習」における評価の在り方,他教科との共通に学習する領域等における内容の精選について研究を深めたい。
最後に,本研究にご協力いただいた福島女子短期大学藤本要先生,福島県立郡山北工業高等学校佐藤譲敬先生に厚く御礼を申し上げます。
「参考文献」
1. 文部省 「高等学校学習指導要領解説保健体育編体育編」 東山書房 1989年12月 2. 文部省 「高等学校保健体育指導資料 指導計画の作成と学習指導の工夫」 海文堂出版 1992年5月 3. 森 昭三 和唐正勝編著「保健の授業づくり入門」 大修館書店 1987年4月 4. 小浜 明 戸野塚厚子「保健の授業担当者の授業意識に関する研究」 学校保健研究 1995年2月 5. 千葉県教育センター 「保健の教材に関する調査研究(1)」 1987年3月