平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -109/175page
主な理由を紹介する。
・適当な指導法がなく,興味を喚起,持続させることが難しい。
・添削等に時間がかかる。
・指導の時間が確保できず宿題に回してしまう。
・書くスピード,内容などに個人差が表れやすく一人一人に対応できない。
同じアンケート調査において「ふだんの授業で悩んでいること」を自由記述の形式で書いてもらったところ,「書くこと」の指導が思うようにいかないとする教師が多かった。そのような実態を反映してか,日常の授業において中心になる領域として「書くこと」をあげる教師の割合は最も少なかった。
具体的な指導法として「単文単位の和文英訳」,「数文単位の和文英訳」,「自由作文」の3つを提示し,ふだんの授業でそれぞれの活動をどの程度行っているかをたずねた結果は次の通りであった。
「単文レベルの和文英訳」を「よくしている」,「時々している」と答えた教師が88.6%いるのに対し,「自由作文」は48.8%と半数に満たなかった。
ここで学習指導要領に示されている「書くこと」の言語活動の内容を見てみよう。
第1学年 (ア) 語句や文を正しく書き写すこと (イ) 語句や文を聞いて正しく書き取ること (ウ) 伝えようとすることを簡単な文で書くこと 第2学年 (ア) 書こうとすることを整理して,大事なことを落とさないように書くこと 第3学年 (ア) 問いたり読んだりしたことについて,その概要や要点を書くこと 単文レベルの和文英訳は,第1学年の内容でありどの学年においても新出文型や文法事項の定着には必要かつ大切な活動である。しかし,生徒に書く楽しみやコミュニケーションをする喜びを味わわせるためには,第1学年の(ウ),第2学年の(ア),第3学年の(ア)の活動は欠かすことができない。すなわち,言語面ばかりでなく内容面にも配慮した指