平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -115/175page

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以上のことから,この活動は「書くこと」の力がつく楽しい活動として,概ね生徒に好感を持って受け入れられていると言える。

3 授業者の声から

授業を担当した高木靖教諭は,次のように感想をまとめている。

『本校生徒が英語の授業に期待することの中で最も多かったのが,「自分の考えを自由に話したり,書いたりできるようになりたい」ということであった。それを受けて,授業にディベート活動の手法を取り入れたり,世界中の国々を紹介する自由作文を作らせたりと,表現力を高める活動を以前より頻繁に設定して,その能力向上に努めてきたつもりである。しかし,反省として各活動が単発で系統的とは言えなかったことや,下位の生徒には難しすぎたことなどが挙げられた。その点で,このレスポンス・ライティングは,定期的な実践とタイムリーな話題の提供により,ほとんどの生徒が「書くこと」に対して抵抗感なく取り組めるようになったこと,回を重ねるにつれて書く量が増えてきたことなどが大きな成果となって表れた。

また,上位の生徒はそれまで2文で表現していた内容を関係代名詞や後置修飾を用いて1文で表現したり,未習の連語を使ったりするなど,より高度な表現に挑戦しようとする姿勢も見られるようになった。下位の生徒にとっても,全く何も書けないで終わってしまうという姿は見られなくなった。ただ,書こうとする内容をうまく表現できないもどかしさや,何度やっても相変わらず英文の中に日本語を用いている自分への腹立たしさなどから,この活動に消極的になっている生徒も出てきた。

そのため,今後の課題として,語い力や基本文型の定着など,基礎・基本との関連を十分に考慮するとともに,生徒作文への援助の手だてや評価の仕方にさらに改善を加えていきたいと思う。』

V まとめ

1 研究の成果

この研究を通して,次のことが成果として確認できた。

(1) 自分の思っていることや考えていることを自由に書くことはauthenticityが高く,書き甲斐があるため,生徒の書こうとする意欲が高まった。継続してこの活動に取り組むことで,まとまった量の文章が書けるようにもなった。

(2) この活動においては,「書くこと」の領域が単独で扱われるのではなく,教師の話を「聞いて」書くため,多量のインプットをすることができる。また,書いた内容について「話す」など,活動を発展させることができる。このように,他の領域と組み合わせた統合的(integrated)活動が行いやすいのでコミュニケーション能力を育てるのに適した手法と言える。

(3) ○か×か的な評価が中心となる和文英訳と違って,RWのようにコミュニカティブでauthenticな活動では生徒の誤りの発生率は高い。しかし,その誤りはふだんの教師の指導の鏡であり,次の指導の手がかりの貴重な宝庫となった。

2 今後の課題

今後この活動を続けるに当たって,次のようなことが課題として挙げられる。

(1) 授業への位置づけ

1. 時間設定

授業の最初にウォーミングアップを兼ねて行うことも考えられるが,各レッスンや学期のまとめの活動として,1単位時間をフルに活用して取り組ませるといったバリエーションも考えられる。授業の目標に照らし合わせて,計画的・継続的に実施していくような位置づけが必要である。

2. ターゲットセンテンスとの関連

各レッスンの中から1つのターゲットセンテンスを選び出し,そこで使われている文型や文法事項などを,キーセンテンスに盛り込んで生徒に提示することも考えられる。そうすることで日常指導する言語材料との関連がより深まり,効果も期待できる。


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