平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -117/175page
ロールプレイングを効果的にするウォーミングアップの在り方
〜中学校道徳授業において〜
長期研究員 原 隆
研究の要旨 本研究は,中学校の道徳授業改善のためにきわめて有効な手法であるロールプレイングの普及を願い,授業にスムーズにロールプレイングを取り入れるためのウォーミングアップの在り方について,研究協力校においての検証授業を通して実践的な研究を行った。 研究の内容は次のようである。 1. ウォーミングアップの具体的な内容・方法を追究する。 2. 計画的・継続的なウォーミングアップを一定期間実施する。 3. 検証授業を実施し,ウォーミングアップがロールプレイングを用いた授業に,どのように影響したかを調べる。 研究の成果として次のようなことが得られた。 4. ウォーミングアップの効果で授業中に演技することに対する抵抗感が薄れ,生徒は自己の考えを出しやすくなった。 5. ウォーミングアップの具体的な内容や回数の目安が得られた。 6. 計画的・継続的に各種のエクササイズを行うことにより,学級内の人間関係にもよい影響を及ぼすことが確認できた。 I 研究の趣旨
学校教育は今,「いじめ」や「登校拒否」などの諸問題を抱えている。
これらの課題には,当然のことながら,学校のあらゆる教育活動を通して応えていかなければならないが,特に心の教育である道徳教育は,その重要な部分を担っている。
学習指導要領に示された道徳の「内容」は,いずれも教育の今日的な課題に深くかかわるものである。
多くの中学校が抱えている「いじめ」や「登校拒否」をはじめとする諸問題は,道徳教育の目標に示された「人間尊重の精神」や「生命に対する畏敬の念」などと深いかかわりを持つものであり,学校における道徳教育の充実こそが「いじめ」や「登校拒否」等の問題解決の決め手となると言っても過言ではあるまい。
特に,学校における道徳教育の中核となる「人間としての生き方についての自覚を深め,道徳的実践力を育成する」道徳の授業は,今日的課題解決の鍵を握っているとも言えるだろう。
現在,どこの中学校でも,学校の教育活動全体を通じて行うべき道徳教育の見直しを図り,全体計画などの諸計画はもちろん,道徳の授業についても改善の方向で努力がなされているが,授業そのものがなかなか改善・充実しないという問題を抱えてる。
この問題を具体的に示せば,次の3点にまとめることができよう。
1. 本音で話し合うような授業をつくることが難しい。
2. 授業(資料)の内容を生徒自身の問題として考えなければならないような授業場面をつくることが難しい。
3. 自分自身を深く見つめさせるような授業をつくることが難しい。
これらはいずれも,道徳の授業を組織する教師の指導力の問題であると考えられる。
このような現状を改善するための一方法として,