平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -118/175page
心理学的な手法である「ロールプレイング」が以下の理由から有効な手段であると考えている。
「ロールプレイング」とは疑似体験の場であり,ある状況や場面だけを設定しておいて,自分の感じ方をもとにして即興的に演じることが原則であり,演劇とは違って演者の口から出る言葉は全て演者の考えである。
したがって,上記1.〜3.のような問題点を解決するためには最適な方法であると考えているが,残念ながら現在のところ広く一般的に用いられているとは言えない状況がある。
本研究では,「ロールプレイング」の普及を願いこの手法を実践しようとする先生方の一助になればと考えて,道徳授業の中でロールプレイングが効果を発揮するような生徒の自主的・自発的な演技の実現を可能にするウォーミングアップのはたらきを実践を通して研究し,ロールプレイングに先生方が容易に取り組めるようなウォーミングアップのマニュアル作成につながる研究にしたいと考えて取り組んだ。
なお,ここで言うウォーミングアップとは,日常の生活の中で長期的に行うものをいう。
II 研究内容・方法
1 研究内容
(1) 文献研究を通して,ロールプレイングを効果的にするために生徒の劇に対する恥ずかしいと思う 気持ちを和らげ,また,学級内の望ましい人間関係を醸成するようなウォーミングアップの具体的方法について調べる。
(2) 研究協力校において,ウォーミングアップとしての各種のエクササイズを一定期間実施し,ウォーミングアップが道徳授業の中で実施するロールプレイングに効果的であるかどうかを探る。
(3) ウォーミングアップが生徒の心理にどのような影響を与えるかを調べ,ウォーミングアップがロールプレイングに及ぼす効果についてまとめる。
2 研究の方法
本研究においては,安達郡本宮町立本宮第二中学校に協力していただき,以下のような具体的方法で実践し,研究を進めてきた。
(1) 生徒への意識調査により,道徳の時間において自分の考えを積極的に発言しにくい要因の調査を行い,問題点の焦点化を図る。
(2) 「帰りの短学活の時間」等を利用し,計画されたプログラムに従ってエクササイズを継続的に行う。
(3) 事前・事後の検証授業を実施し,継続的なウォーミングアップが道徳授業のロールプレイングにどのような影響を及ぼすかを生徒の意識調査や授業感想等から分析し,ウォーミングアップの有効性を確かめる。
(4) 生徒の意識調査等を数値化して,その有効性を客観的にとらえるようにする。
III 研究の実際と考察
1 研究の基本的な考え方
(1) 中学校道徳授業においてロールプレイングに期待できること
道徳の授業において用いられる指導方法には「話し合い」,「説話」等様々なものがあるが「ロールプレイング(役割演技)」もその一つであり,文部省発行中学校指導書道徳編(昭和53年版)には次のように書かれている。
○ 抽象的,観念的な話し合いになりがちな内容であっても,演技を通して具体的に考えさせることができる。
○ 準備されない即興的な演技は,生徒の平素のものの見方,考え方,感じ方等がよく反映されるので,日常気づかなかった自分に気づいたり,級友に対する理解を深めたりすることになる。
(2) ロールプレイングにおけるウォーミングアップの役割
ウォーミングアップがロールプレイングに及ぼ