平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -128/175page
II 研究内容・方法
1 研究内容
今までのコンピュータ利用の教育は,チュートリアル型やドリル型が中心で,主に学習の定着を図ることが目的であった。このようなコンピュータ利用は,児童生徒が学習内容を完全に習得するためには今なお有効で必要なものであるが,児童生徒がコンピュータに制御されながら,前もって決められたコースをたどって学習していくものといえる。
これに対し,自分の問題や疑問を解決したり,法則性を発見したり,イメージや想像をふくらませたりするために児童生徒自らがコンピュータを道具として活用していく,いわゆるツール学習が児童生徒の自主的な学習を支援する立場から求められてきている。本研究は,このツール学習のためのソフトウェアを開発しようとするものである。さらにそれを活用することによって学習内容に対する興味・関心が高められ,次の新たな学習活動を生み出していくような内容と構成をもったソフトウェアの開発を基本理念とした。
では,ツール学習を可能にするにはどのような特性を持ったハードならびにソフトウェアが適しているかというと,それを活用する児童生徒との相互作用(インタラクション)が行われやすいものといわれている。そして,このインタラクションをより可能にしているのがハイパーメディア(いわゆるマルチメディアパソコン)である。このハイパーメディアは,現在児童生徒の自主的な学習や対話や相互作用による学習をより活性化しようという動きと連動して脚光を浴びてきている。このハイパーメディアの特徴は次の4点としてとらえることができる。
1. 多種多様な,そして異質な情報を並列提示できること。(動画,静止画,音声,文字といった異質なメディアを一つのモニター上に提示できる) 2. 教材の提示順序が柔軟で,非直線的で,かつ非構造的である。無構造ではなく,構造はあるのだが,かつてのプログラム学習のような線形的,階層的なものではない。 3. 生徒がコンピュータのモニター上の画面と相互に作用しながら,マイペース,マイコースの学習ができる。 4. 生徒が自分で教材の順序を変え,書き加えかつ編集することもできるし,それをまた新しい教材として,友達が使用することも可能である。 〔水越敏行著 「メディアが開く新しい教育」(p.142)学研(1994)より抜粋〕 このようにハイパーメディアは,児童生徒の個々の主体的な学習を進める上で優れた特徴を持っている。そこで,本研究ではハイパーメディアに対応して,マルチメディア及びマルチウインドウが学習上効果的に活用できるようなツール学習のためのソフトウェアの開発を具体的な研究開発の主眼とした。
また,マルチメディアの教材開発では,画像や音声の取り込み方法についても研究を行った。
2 研究方法
(1)ソフトウェア開発協力員の依頼
開発にあたっては以下の目的で教育センター内を中心にソフトウェア開発協力員(以下「協力員」と記す)を依頼し,連携を図りながら研究開発を行った。
1. 質の高い教育ソフトウェアの開発を行う。
2. グループによる共同開発のあり方を探る。
(2)情報処理技術者の活用
マルチメディアに対応したソフトウェアの開発では,最新の技術が必要とされる。そこで,以下の目的で,情報処理技術者(以下「SE」と記す)を活用してソフトウェアの開発を行った。
1. マルチメディア・マルチウインドウに対応した開発ソフトウェアのプログラミングを行う。
2. マルチメディア対応のアプリケーションソフトウェアの活用方法の研究を行う。
3. 動画,静止画,音声等のマルチメディアに対