平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -138/175page
〈「関数関係を考察する能力を高める」ための支援ソフトウェアの開発〉
中学校数学 関数学習支援ソフト「お助けマン!」 遠 藤 隆 徳 1 開発の意図
学力到達度調査等により福島県の中学校数学科においては,「数量関係」,中でも『関数』の分野の落ち込みが指摘されている。
その要因について分析してみると,
(1)関数表現として,表・グラフ・式があり,これらを統合的にとらえることができない。
(2)現実の事象について,関数的な見方・考え方の必要性や有効性の認識が不足しており事実問題へ対応することができない。
(3)関数の学習を進めていく過程で,グラフをかいたり,表を作ったりすることが面倒がられ,それが理解の妨げになっている。
などが考えられる。
また,「中学校指導書 数学科編」(文部省)より,表・グラフ・式の取り扱いについて,
中学校においては,調べようとしている関数関係の内容の深まりに従って,関数関係を表,グラフ,式を用いて表す力を一層伸ばし,それによって, 関数関係を考察する能力を高める ことになる。(略) 関数関係を表やグラフや式に表すことは,それによって関数関係における変化や対応の特徴をとらえることがねらいである。 表,グラフ,式 を用いて関数関係を表すというとき,これらを並列的に扱ったり, 別々のものとして扱ったりするのではなく ,一つの関数関係について 表,グラフ,式による表し方が一体となって理解 されなければならない。 <抜粋> と述べられている。(下線は,筆者)
そこで,生徒が関数関係をとらえたり,表現したりする上で有効な「表」「グラフ」「式」を,自ら学習するための道具(ツール)として利用できる教育用自作ソフトウェア(以下,開発ソフト)を開発することにした。
2 開発の構想
中学校数学科「関数」の分野におけるマルチウインドウタイプのソフトウェアとし,次の点に配慮する。
(1)表・グラフ・式を一体としてとらえることができるようにする。
(2)現実の事象,あるいは事実問題から,関数関係の発見や学習のヒントとなる情報を得ることができるようにする。
(3)生徒が利用しやすく,手軽に使え,グラフ作成が簡単にできるようにする。
具備すべき条件として,
1. 「対応表画面」「グラフ画面」「式画面」がそれぞれ独立しながら,互いにデータのリンクがなされるようにする。
2. 「比例・反比例」「1次関数」「2乗に比例する関数」など中学校全学年で利用できるようにする。
また,開発の各段階で教育センター内の協力員の意見をソフト開発に生かすことにする。プログラミングは,SEに委託する。
3 ソフトウエアの概要
(1)ソフトウェアの構成
(2)ソフトウェアの内容(抜粋)