平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -141/175page
(3)授業実施結果
1. 授業者から
ア 黒板でグラフや表を提示するより,真近な画面で視覚に訴えることができ,課題解決への意欲が高まる。
イ 表・グラフ・式とどこからでも関数を考えることができ,関数の学習に効果的である。
ウ 学習したことの確かめに効果を発揮する。
2. 生徒アンケートから(調査対象:90名)
・このソフトは授業に役立ちましたか。
ア とても役立った …50名 イ 役立った方 …35名 ウ あまり役立たなかった … 4名 エ 全く役立たなかった … 1名 ・このソフトを使った授業を通して関数に対するあなたの興味・関心はどう変わりましたか。
ア とても興味・関心が高まった …25名 イ 興味・関心が高まった方 …56名 ウ 興味・関心がなくなった方 … 8名 エ 興味・関心がなくなった … 1名 3. 授業観察から
【授業1】より
比例のグラフの特徴を調べるため,多くのグラフが必要になった。比例定数を変えるだけでグラフを瞬時に表示するため時間短縮が図られ,思考したり,隣の生徒と相談するゆとりが生まれた。
【授業2】より
2点を通る直線の式を求める問題では,連立方程式が解けないと傾き・切片を計算で求められない。
ところが,グラフ画面から条件の2点をクリックして直線をかき,そこから式を導いた。このことから,連立方程式が解けなくともグラフをかき,2点間の変化の割合より傾きがわかることを発見できた。
5 まとめ
(1)成果
○ マルチウインドウ化とマウス操作等,表示性や操作性が向上した結果,生徒が開発ソフトを進んで活用し,自分なりの使い方を考えることができた。
○ 課題を解決する場面で,生徒自ら思考しやすいように課題を表示したり,考えたことの確かめに利用するなど,ツール的な活用ができた。
○ 事象を関数としてとらえ,表現する上で表・グラフ・式の違いはあるが,互いに結びつき関連しあっていることを開発ソフトを使用しながら学ぶことができた。
○ 関数の学習は,生徒たちの苦手意識の強い分野,わかりにくい分野であるが,開発ソフトを活用することによって,アンケートからも興味や関心を高める効果が見られた。
(2)課題
○ 今回の授業活用は中学1年生と2年生で実施したが,中学3年生での活用により開発ソフトのよさがさらに引き出されると思われる。そのためには,中学校1年生から意図的に開発ソフトを授業に活用する計画を立てる必要がある。
《参考文献等》
・ 文部省「中学校指導書 数学科編」 (1989) ・ 永野和男 編著「これからの情報教育」高陵社書店 (1995) ・「中学校数学科教育実践講座」 (株)ニチブン (1994) ・ 正田 實 他編 『思考を深めるためのコンピュータの活用』 ・ 平岡 忠 他編 『関係性をとらえる関数』